東京都の小池百合子知事が少子化対策で〝勝負〟に打って出てきた。18歳までの子供1人当たり月5000円を給付。年間6万円は、〝大盤振る舞い〟ではある。間髪入れず、今度は2歳までの第2子の保育費を完全無償化すると表明。大胆な子育て支援に驚いた。
「本来は国家的事業だが、都が先駆けて対策を充実させていく」と小池氏。確かに子育て支援は全国一律の政策であり、国は4月に「こども家庭庁」を創設。岸田文雄首相は「異次元の少子化対策に挑戦する」と大見えを切った。だが財源については「社会全体での費用負担のあり方を検討」と、得意の〝検討使〟ぶり。「異次元」の具体的中身は不明なままだ。
防衛費増額の議論が優先されたのは、まさに今回のバイデン米大統領との首脳会談の〝お土産〟だ。岸田首相が訪米している間隙を突いて、小池氏が少子化対策で国に対抗したようにみえる。
自民党を離党し都知事となって再生を図った小池氏の思いは、首相の座だっただろう。旧民主党と合流した希望の党での一発勝負は失敗し、自民側の窓口だった二階俊博元幹事長のルートも消えた。現在は国民民主党とセットでの自民合流や新党結成の噂が絶えない。一時期の小池人気は陰りが見えるとの見方もあるが、今回は小池氏復活ののろしに映る。
少子化対策について「国が遅いだけ」と言ってのける小池節はパンチが効いている。来年7月に予定される都知事選までに、大勝負を仕掛けるチャンスはあるのか。「国もスピード感をもって、国民に刺さる政策を速やかに実行することが必要だ」とのアピールは、〝私に首相をやらせなさい〟というように聞こえてならない。(政治評論家)=毎週日曜掲載
この記事をシェアする