西武が交流戦で初優勝した。シーズンの勢いそのままに、交流戦を制したといえばそれまでだが、パ・リーグでは唯一優勝がなく、強いときでもセ・リーグの投手を打ちあぐね、取りこぼしていたイメージがあり、球団首脳から「交流戦は5割で十分」という声が出るほど苦手にしていた。
それが、なぜ今年は歴代最高勝率で勝てたのか。まず浮かんだのは鳥越裕介ヘッドコーチだった。交流戦はソフトバンクコーチ時代の7年間で5度優勝、ロッテコーチで2018、22年は3位。23、24年の交流戦で2年連続最下位だった西武を、昨年は4位に押し上げ、交流戦巧者といっていい。実際に「比較的、負けた印象はあまりないですよね」という返事が返ってきた。
交流戦の戦い方、勝ち方はあるのかを聞くと「秘策はないです。やっているのは選手なんで、僕は関係ないです」と一蹴されたが「セ・リーグはやるべきことをやっていないチームが多いように見えた。勝てる雰囲気は確かにあると思う」とズバリ。5月29日にDeNAが挟殺プレーでもたつき、打者走者の桑原将志が三塁進塁を許すなど、数字に表れないミスも多かった。
交流戦66得点のうち、相手の自責点は56で、18試合で10点ももらった形。黒田哲史内野守備走塁コーチも「ミスをしない。逆に相手のミスにつけ込むこともできた。特に広島戦や巨人戦はそうだった。点が取れないときに、相手のミス絡みで得点できるのも強み」と勝因を挙げた。
鳥越ヘッドにこの話を聞いたのは、巨人戦のときで「普通だったら、優勝が決まってもいいぐらいのペースで勝っているのに。ありえないですよ、こんなの」と驚くほどハイレベルなV争いとなり、3敗しかしていないのに、最後までもつれた。
今季は例年にも増してパが圧倒。「うちが突出して勝っていればわかりますけど。軒並みパ・リーグの方が勝っている。そのリーグのレベルでやっているので、おかげ様で勝ちを拾えている」と分析した。
交流戦防御率1.53は12球団トップで歴代2位。先発陣の防御率1.33は24年の広島の1.49を抜く歴代1位。強力投手陣が支えたことは間違いないが、堅い守備も印象に残った。
今季の併殺を取った数は65(2位は巨人の61)、交流戦だけで22(2位は日本ハムの18)は、ともに今季12球団トップ。相手チームは併殺コースの打球で1アウトは取れても一塁への送球が逸れたり、それ以前に失策してピンチを広げる場面もあった。
しかし西武は、源田壮亮、滝沢夏央ら二遊間の守備力はもちろんのこと、今季から三塁にコンバートされた渡部聖弥の送球がいい。一塁のタイラー・ネビンや長谷川信哉も上手く、確実にアウトを取っている。広池浩司球団本部長も「守りが非常に安定しているし、併殺も多く、球際も強い。もちろん先発が大崩れしないのが大きいが、守備が投手を支えてくれている」と堅守が光った。
投打もかみあった。交流戦最後の2試合は1-0の勝利で、殊勲打は石井一成と桑原のFAコンビ。獲得に尽力した広池本部長は「(石井は)〝ここで打つの!?〟みたいなところで長打を打つのが持ち味。いいところで打っている」と評価。今季3本塁打の試合はすべてヒーローインタビューに選ばれており、貴重な働きをみせている。
改めて、セ・リーグとの違いはどこにあるのか。仁志敏久野手チーフ兼打撃コーチは現役時代は巨人、横浜で交流戦に出場し、DeNAで2軍監督を務め、セ・リーグをよく知る。
「パ・リーグはDHがある分、野手の駒がひとり多い。昔の巨人(2000年頃?)はDHがなくても選手がいっぱいいたけど、セ・リーグのチームはレギュラーと同じくらいの力の10、11人目の選手をベンチに置いておくような編成をしていない。DHを使えても、セ・リーグは利点があまりない」と証言。
「もちろん(バッテリーの)攻め方も違ったりするけど。格差があるとかではなく、そういう違いもあると思う」と続けた。
しかし、やはりすごいのは先発6本柱。仁志コーチが「普通はいくら投手がいいといっても、点を取られるのに。2試合連続で1-0はすごい」と打撃陣を代表して感謝した。
ちなみに交流戦優勝賞金は3000万円。優勝直前に奥村剛球団社長に使い道を聞くと「うちだけパ・リーグで1回も優勝してないんですから。考えてるわけないじゃないですか」と笑って煙に巻かれたが、通常は現場と球団が折半。06年に今の倍の36試合制で優勝したロッテは5000万円を獲得し、半額は本拠地横のグッズショップ建設費用に充てられた。
個人的にはファームのカーミニークフィールドに、ヤクルト戸田球場のような内野席を増設できないかと思うが、西武もぜひ有効に活用してもらいたいものだ。
■塚沢健太郎(つかざわ・けんたろう) 1994年から記者生活をスタートし、西武担当の手伝いで黄金時代の終焉を見届ける。野村ヤクルト、長嶋巨人、野村楽天を担当し、2010、20年に夕刊フジ、14年から3年間はサンスポで西武担当。19年11月に「生涯一捕手」の野村克也さんに公認された「生涯一記者」がコラムタイトル。自称ノムさんを一番取材した記者で、16日の明け方に野村夫婦が夢に登場し、なぜか西武の優勝を確信した。