さらにレギュラーシーズンで大差をつけた相手との〝敗者復活戦〟に臨まなければならない、心理的な理不尽さ。2位のDeNAとは13ゲームで巨人とは15ゲーム差だったのに、アドバンテージはわずか1勝。球界内外に「こんなCSの制度はおかしい」という声がある中で、阪神の選手たちは「負けてもともと」の心理状態で向かってくる相手と戦うわけです。想像以上にやりにくさはあるはずです。
投手3冠に輝いた阪神・村上頌樹それらを承知しているからこそ、藤川監督はCS不要論を否定し、「こんな面白いものを止めてどうするんですか」と語気を強めたのでしょう。調整の場である宮崎に自ら乗り込み、ベンチで采配を振る…という異例の行動を取ったのも、逆に見れば、それだけファイナルでの「3勝」を容易ではないと見ている裏返しです。
本当に阪神はファイナルで「やばい」のかー。データを見れば全然、大丈夫です。チーム防御率2・21。ファイナルで先発するであろう村上は14勝4敗、防御率2・10ですし、才木も12勝6敗、防御率1・55です。リリーフ陣も安定していて、DeNAと巨人のどちらが出てこようと、そう簡単に点は取られません。さらに特筆すべきは失策数の少なさです。ここ何年もリーグワーストの失策数が、今季は57でリーグ最少です。投手がよくて、守備も堅固となれば、相手に無駄な点を許すことはないはずです。実際、チーム失点は352です。12球団で一番少ないですね。
攻撃面でもチーム盗塁数はリーグトップの100です。犠打・犠飛も最多の161です。本塁打の出にくい甲子園で戦うわけで、こうしたスモールベースボールができる阪神打線は、少ない得点のチャンスを確実に生かす術を心得ています。短期決戦では投手力や守備力の優劣や、細かな攻撃面のつなぎができるか、できないか…で局面は変わります。
あくまでも143試合の投打のデータを紐解くと、阪神に不利な材料は何ひとつ出てきません。なので心配は無用なのですが、唯一の不安といえば、143試合で見せつけてきた「阪神らしさ」を短期決戦で見失うことぐらいですかね。藤川監督が普段通りのタクトを振るならば、どこにも死角は存在しませんね。
■植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。