サンケイスポーツでは、女子200メートル個人メドレーと400メートル個人メドレーで代表入りを決めた競泳・大橋悠依(25)=イトマン東進=の特集を数多く展開してきた。当時の記事を紹介する。(年齢、肩書等は掲載当時のまま)。

■生まれなど 1995(平成7)年10月18日生まれ。滋賀・彦根市出身。県立草津東高を経て、東洋大。イトマン東進所属。

■恩師 競泳日本代表の平井伯昌ヘッドコーチを慕い、同氏が監督を務める東洋大に進学。卒業後も東洋大を拠点とする。

■競技成績 東洋大4年時の17年世界選手権で、200メートル個人メドレー銀メダル。18年パンパシフィック選手権では200、400メートル個人メドレー2冠。同年のアジア大会400メートル個人メドレー金メダル。19年世界選手権400メートル個人メドレー銅メダル。200メートル個人メドレーは泳法違反のために失格。200、400メートル個人メドレーの2種目で日本記録を持つ。

■競技を始めたきっかけ 三姉妹の末っ子で、姉の影響を受けて幼稚園の頃から彦根イトマンスイミングスクールで水泳を始める。

■全国大会 小学3年時に、50メートル背泳ぎで初めて全国大会に出場。彦根市立東中3年時の全国大会では、200メートル個人メドレーで優勝。

■幼なじみ 陸上短距離の桐生祥秀とは同郷で同級生。大学も同じ東洋大だった。

■不振 大学入学後から不振に陥り、大学2年で出場した日本選手権では200メートル個人メドレーで最下位の40位。その後に貧血が判明し、服薬や食事の改善で不振から脱した。

■シンデレラガール 17年に初めて日本代表入りし、代表デビュー戦となった同年夏の世界選手権で銀メダルを獲得した。

■ライバル カティンカ・ホッスー(ハンガリー)。「鉄の女」の異名を持つスター選手。個人メドレー、背泳ぎを得意とする。

■あだ名 ゆいぴー、ゆいぽん。

■好きなアイドル BiSH

■好きなキャラクター 地元の滋賀・彦根市のゆるキャラ、ひこにゃん。

■座右の銘 覚悟。

■サイズ 173センチ、キロ。

“女性五輪”で輝く!!今夏に迫る東京五輪でメダル獲得を目指す競泳の青木玲緒樹(れおな、24)=ミズノ、大橋悠依(24)=イトマン東進、白井璃緒(20)=東洋大、今井月(るな、19)=コカ・コーラ=の女子対談が実現した。五輪メダリストを数多く育てた平井伯昌(のりまさ)コーチ(56)の下、東京・板橋区の東洋大で練習する“4姉妹”。出場選手に占める女子の比率が過去最高を更新する48.8%になる東京五輪で、日本の女子をけん引する。(取材構成・角かずみ)

◆あっという間に!2020年

青木 「2020年の幕開けです。2020年といったら東京五輪。身も心も引き締まる感じがするね」

大橋 「去年は1年という時間がすごく早く過ぎ去ってしまうと感じた。2020年、本当に一瞬たりとも気を抜いていられない日々が始まる」

白井 「東京五輪が近づいてきているという実感がある。緊張というかちょっと不安もあるけど、まずは4月の代表選考会までの残りの期間が大事」

今井 「東京五輪が決まったのが2013年。あっという間に2020年が来たなぁ」

青木 「東京に決まったときの記憶がない。五輪を目指すレベルじゃなかったもんなぁ(笑)」

大橋 「私も(笑)。自分がそこに選手としてかかわることになるとは思ってもいなかった」

白井 「私だって何も考えてなかった。決まったんだぁ~っていう感じだった」

今井 「私は中1だったけど、結構意識してました。東京に決まったときはうれしかったし、出たいなって」

青木 「4月の選考会が勝負だね」

大橋 「2019年はいろいろうまくいかなくて、考えすぎていた部分もあった。それを夏に学んで、それ以降はしっかり練習もできてすごく順調。選考会でも五輪でも爆発して、200mと400mの個人メドレーで自己ベストを更新したい。いつでも、自己ベストを出せる力はついてる」

青木 「私は去年の世界選手権で100m平泳ぎで4位に終わってから、練習はわりと頑張れている。あとは試合へのもっていき方。試合での結果が良かったり、悪かったりなのできちっと平均を上げたいし、それをまず選考会までにうまくもっていきたい」

白井 「私の場合は去年の日本選手権からずっと好調が続いていて、4月の選考会で確実に自己ベストが出る練習もできている。このままいけば、もちろん日本新も狙える。モチベーションも上がっている」

今井 「私は練習をもう少しちゃんと頑張らなきゃいけない。試合のアベレージをもう少し高くして安定感を出さないといけないし、もう少し強くなれるように自信のつく練習をしていきたい」

◆みんな一緒に代表入りた~い

青木 「4月の選考会は100、200mの平泳ぎに出るから、どっちも自己ベストを更新したいな」

大橋 「私は今のところ、200mと400mの個人メドレーだけに出る予定。200は2分7秒前半、400は4分30秒を割っていけるところまでいきたい。練習の割合は断然400が多くなると思うけど、かける思いとしてはハーフハーフ」

白井 「私は去年の世界選手権で、200m自由形で決勝には行ったけど、まだ世界とは差があって。でもそのあと、9月のインカレの200m背泳ぎで2分7秒台が出て、自由形か背泳ぎかといったら、メダルを狙えるのは背泳ぎのほうだって。そういうこともあって、4月の選考会は予定では100、200mの背泳ぎに出場して、200m自由形は平井先生と相談して決めようと思ってます」

◆仲良く刺激与え、受けあって

今井 「私は100、200mの平泳ぎと200m個人メドレー。100m自由形にも出るかもしれない。でも一番自分がやりたいと思っているのが200m平泳ぎ。玲緒樹さんと代表に入りたい!!」

青木 「一緒に練習することでお互い刺激があるよね」

大橋 「練習のレベルがすごく高くて、チーム内で競い合ってできるのはすごくいい」

白井 「私は悠依さんに憧れて東洋大に入ったので」

大橋 「ほんとかよ~(笑)」

白井 「先輩に食らいついていきたいし、練習タイムは自分が引っ張っていきたいなって思っている。それが今の自信につながっているので、いいチームワークですよね」

今井 「私の場合、東洋大に入った理由は練習環境もそうだけど、自分の性格からして、あまりやらなくなっちゃうところがあるから。自分より速い選手が努力しているのを近くで見ることで、すごく自分にプラスになるし、自分もやらなきゃという気持ちにさせてもらえる」

青木 「私はみんな年下だけど、見習うところがたくさんある。璃緒なら前向きに練習を頑張ったり、悠依ちゃんならスイッチの切り替えがうまかったりする」

大橋 「一人一人に言ってくれるんだ!!」

青木 「あはは。一応、最年長だから!!」

今井 「私にもあります?」

青木 「悠依ちゃんは常に目標を持って前向きな姿をすごく尊敬する。同じ種目のルナが夏に頑張っていたのはすごく刺激になった。刺激を与え、受けあってるよね」

大橋 「与え、受けあって!?」

青木 「みんな仲良く頑張れているってこと!!」

大橋 「私たち女子は強いというか、明るいよね」

青木 「(ともに平井コーチの指導を受ける)萩野(公介)くんとか小堀(勇気)さんもいるけど、ルナなんて2人のこといじってるもんね」

今井 「私たちの勢いに負けてますよね」

大橋 「東京五輪の女子の参加比率は過去最多のようだし、今の私たちの勢いを日本代表としても出していきたいよね」

青木 「女子4人でいるのは心強いね」

大橋 「昨年11月のスペインでの高地合宿で、私だけ練習が別メニューで心が折れかけてて。タイムが遅くて平井先生から怒られたら、玲緒樹さんがプールから部屋までの道ですごく励ましてくれた」

青木 「どうしたの?っていうくらい暗かったからさ」

今井 「私も練習がきつすぎて更衣室で号泣していたら、悠依さんが『お互い頑張ろう』って励ましてくれて」

白井 「私はそんなきつい練習じゃなかったと思うけどね」

◆合宿で怒られケーキやけ食い

今井 「こういう人もいますけどね!!その時は玲緒樹さんも励ましてくれたけど、最後、更衣室を出るときに私の顔を見て『え?泣いてたの』って言われて。拍子抜けしました」

青木 「着替えながら聞いてたから~(笑)」

大橋 「逆に平井先生から全員で怒られたときは、みんなで『なんだよ』みたいな感じになるときもあるよね」

白井 「あのときは、みんなでケーキ食べましたよね」

大橋 「そうそう!!去年の夏、(米国の)フラッグスタッフでの合宿のとき、平井先生に怒られて、その日の夜に玲緒樹さんがケーキを買ってきてくれて、みんなでやけ食いした」

青木 「私の場合、買ってくる途中に先生にばれそうだから、それがハラハラ、ドキドキだった」

白井 「このケーキの味は忘れないって」

大橋 「そういうこともして、ストレス発散してる」

青木 「でも平井先生の存在は大きいよね」

今井 「私にとっては東京のパパ。すべてに向き合ってくれるから」

青木 「『なんでも言ってこいよ』って感じだよね。すべてのことで頼れるよね」

白井 「私にとっては水泳のパパかな。昔の(12年ロンドン五輪100m背泳ぎ銅メダル)寺川綾さんとかの練習データを見せてくれて、『(背泳ぎの選手は)こういうのをやってたんだぞ』っていろいろ知識や情報を教えてくれる。これから水泳で成長していくにはありがたい存在です」

◆師匠の影響…カメラが趣味に

大橋 「私は平井先生を決め手に東洋に来たから。東洋大に入学する前に、先生から『時間がかかる。3、4年とか社会人になってからが勝負』って言われていてその通りになった。未来を予測する能力がすごいなって思うし、自分でもできるんじゃないかって思わせてくれる。先生はカメラがめっちゃ好きで、そこも影響されて7万円もするカメラを買っちゃった。私はBiSHっていうアイドルが一番のおすすめで、オフはライブに行って写真撮影もしてる」

今井 「私はカメラを首から下げてたらかわいいから買っちゃった」

青木 「私も先生の影響もあって大学生の頃から持ってる。でも先生から『玲緒樹のカメラは駄目だ』ってすごく言われる」

今井 「先生はカメラに詳しすぎ。撮り方とかすごく言ってくるんですよ。『こうやって撮るんだぞ』って。ちょっとうるさいよってこともあるけど、めっちゃきれいに撮ってくれるんです」

大橋 「ほんと、うまい!!」

青木 「でもその写真データを送ってくれない。欲しいのに」

白井 「平井先生を筆頭に、私たちいいチームですよね」

◆五輪では自分のレースをする

今井 「そうだね。東洋大に入学してもうすぐ1年。4年前のリオデジャネイロ五輪では決勝に行くっていうことも難しいと感じた。東京五輪ではまずは自分のレースをしていけるところまでいって、そこに結果がついてきたらそれが一番いいなと思ってる」

白井 「私は100m背泳ぎは決勝進出、200mは2分5秒台前半ぐらいじゃないとメダルは取れないから、そこを目標にして銅メダルでも銀メダルでも」

今井 「金メダルでも?」

白井 「金メダルでも取れるなら全力で取りに行きたい」

青木 「私はとにかくメダルを取ること。100、200m平泳ぎのどっちも出られたらどっちも狙えると思う」

大橋 「声ちっちゃいですよ(笑)。私は、一番は自分のレースをして、自分の力を出し切ること。400m個人メドレーはやっぱり金メダルを狙いたいけど、まだもう少し覚悟というかそういうものが足りないと思う。まずは200、400m個人メドレーの2つでしっかりメダルを取りたい」

4人全員 「応援を力に変えて、やってやろう!!」



2020年東京五輪に関連する選手や、気になる事象を掘り下げる連載「TOKYO2020カウントダウン」(随時掲載)がスタート。第1回は、競泳の平井伯昌コーチ(56)の門下生による座談会を取り上げる。大橋悠依(24)=イトマン東進=ら現役4選手と、2012年ロンドン五輪女子100m背泳ぎ銅メダルの寺川綾さん(35)ら5人の五輪メダリストが集合。前編は、今の自分に足りないものをテーマに語り合った。(取材構成・角かずみ)

◆「金」か「メダル」か

緊張する青木玲緒樹(れおな、24)=ミズノ、大橋、白井璃緒(20)=東洋大、今井月(るな、19)=コカ・コーラ=の現役4選手の前に、五輪メダリストの中村礼子さん、寺川さん、加藤ゆかさん、上田春佳さん、星奈津美さんが登場。本紙評論家の寺川さんが切り出した。

寺川 「4月の代表選考会や東京五輪に向けて、今の自分に足りないものは?」

大橋 「私に足りないのは“覚悟”です。金メダルを400m個人メドレーで狙いたいけど、金だけを狙ってここからやる覚悟があるかって言われると、たぶんまだビビるなっていう感じで。先輩方は自分のライバルの選手にどうやって勝つと決めてやっていましたか」

星 「私は15年の世界選手権で金メダルを取ったけど、私は金を狙うと駄目になるタイプだった。あのときは狙っていなくて、ラッキーだったというか。自分のスタンスは金メダルを取りたいということをあまり意識しない方が合っていたなと思う」

中村 「私は『金メダルを目指したい』って平井先生に言って止められたことがある。アテネ五輪の直前、金メダルはいけない実力だった。平井先生も普段の私の練習を見ていて『(金ではなく)メダルを狙っていこう』と。悠依ちゃん自身の覚悟と、平井先生のGOサインが出れば、絶対大丈夫だと思う」

寺川 「平井先生は私たちのときみたいにメダルを取らせにいくパターンと、(04年アテネ、08年北京両五輪平泳ぎ2冠の)北島くんとか(16年リオデジャネイロ五輪400m個人メドレー金の)ハム(萩野公介の愛称)のときみたいに、金を取らせに行く両パターンを知ってる。今の悠依ちゃんがどっちに行くのかは、もちろん悠依ちゃんの気持ちも大事だし、先生がほんとにどう思っているのかっていうのも大事なのかなと思う」

◆平井コーチを信頼

大橋 「金メダルと言葉に出したら、自分の出した言葉に対しては、責任を持たないといけないと思う。そういうことに対する覚悟がまだないのかもしれない。逃げ道がなくなるということに対して、まだちょっと甘いのかもしれないです。でも平井先生の言葉をほんとに信頼してやるしかない。先輩方の話を聞いてすごくそう思いました」

白井 「私に足りないのは“貪欲さ”です。200m背泳ぎでメダルが取れるかもしれないところまできて、今は『取りたいな』ぐらいの気持ち。それを『取る』っていう気持ちになれたら狙えるんじゃないかなと」

寺川 「その種目は礼子ちゃん以来、五輪でメダルがないよね」

中村 「練習ももちろんだけど、むしろ『ワンチャン(ワンチャンス)、やってやる』っていう気持ちだよね。一試合一試合、とにかく記録を伸ばしていくことが大事。まずは自分のレースができるかだよ」

■競泳界のレジェンドが現役4人にメダルの心得伝授

白井 「私は自信しかない」

青木 「私に足りないものは“自信”です。どうしても不安が勝っちゃうことがある。皆さん、自信を持ってレースに臨んでいましたか」

白井 「私は大きな大会前は自信しかない」

(全員で笑い)

上田 「私たち(寺川、加藤、上田)が現役のときは、いつも日本選手権の初日に(100mバタフライの)かとゆか(加藤)が出ていたから、かとゆかが良ければ(一緒に練習する他の選手の結果も)絶対いいと思ってた」

加藤 「私はめっちゃ、緊張してたよ。1週間前から。ごはんが食べられなくなる。だから私は2人(寺川、上田)に助けられた。一人じゃどうすることもできなくて」

上田 「『ごはん食べて』っていつも言ってたもん」

寺川 「(青木)玲緒樹の様子がおかしくなってくるのわかるでしょ? それを3人で補ってあげればいい。『いつもみたいになってますよ』って」

上田 「昨年の世界選手権の100m平泳ぎで4番だったんだから自信を持っていいと思う。だってあの舞台で4番だよ。そのまま泳げばいい」

◆青木「励まされる会に…」

青木 「なんか励まされる会みたいになってる」

寺川 「みんなで助け合えば大丈夫。一緒に練習している強みはそういうところもあるんだから」

今井 「私に足りないものは“練習”。練習がきつすぎて、嫌って思ってしまう。気分によって、めっちゃ変わっちゃう」

上田 「それ駄目。あともうちょっとなんだよ、五輪まで。あとちょっと頑張れば、五輪も終わるんだよ」

◆今井「頑張っているけど」

寺川 「4年後の今、このタイミングで同じだけ頑張れるかって言われたらそうじゃない。もう二度とこの瞬間はこない。一生こんな苦しいことはしないんだなと思って耐えるしかない」

今井 「一応、頑張ってることは頑張ってるんで

すけど…」

上田 「一応頑張ってるじゃ、五輪はちょっと間に合わないですね。全員頑張ってるから。(代表枠は)派遣標準記録を突破して2人まで。3番じゃいけないんだから。だからチームで盛り上げていくのが大切」(後編に続く)


2020年東京五輪に関連する選手や、気になる事象を掘り下げる連載「TOKYO2020カウントダウン」(随時掲載)の第2回は、競泳の平井伯昌コーチ(56)の門下生による座談会の後編。大橋悠依(24)=イトマン東進=ら現役4選手と、2012年ロンドン五輪女子100m背泳ぎ銅メダルで本紙評論家の寺川綾さん(35)ら5人の五輪メダリストが集合。五輪までにプラスしたいものをテーマにトークを繰り広げた。(取材構成・角かずみ)

◆見た目も“か細い”

寺川 「前回は自分に足りないものを話しましたが、今回は五輪までにプラスしたいものをテーマにします」

大橋 「私は“パワー”。これが身につくことで、2コメ(200m個人メドレー)もいい順位を狙える。五輪で圧倒的な力を見せられるんじゃないかなと思います。見た目もそうですし…。か細いと思われないようにしたい」

寺川 「入場するとき、(水着の上に着る)ジャージーに肩パッドを付けていけば(笑)」

大橋 「泳ぐ前に脱ぎますけどね(笑)」

上田 「短距離の選手をライバルにしちゃえばいい。そうしたらパワーがつくよ」

寺川 「4コメ(400m個人メドレー)がメインだけど、パワーをつけたいと思うことは大事。持久力がすごいあるから、あとはパワーが備わったら最強だよ」

白井 「私は“テクニック”をプラスしたい。今まではパワーで泳いできたけど、浮き上がりとかのターン動作で無駄な0・01秒を省けば、全体で1秒ぐらいは速くなると思う」

寺川 「私は(キックする)脚の力が弱かったから、最後の最後のスパートと最初の出だしでしか脚を使わないテクニックを練習したよ」

上田 「浮き上がりについては大先輩(加藤)がここにいますよ」

加藤 「浮き上がりばっかり練習していたからね。練習後に自主的にやっていたし、そういう姿勢も大事」

上田 「私は横で見ながら盗んでた。仲が良いから技術を教えてもらえる。これぞ、チームでやれるメリット。それを生かさないとね」

青木 「私は“集中力”をプラスしたい。100m×20本の練習で、同じタイムで20本、泳ぎ続けなきゃいけないのに集中力が切れちゃって。それがレースにも出ちゃう。頑張るか頑張らないかしかできなくて、中間ぐらいの力で泳ごうとするとモゾモゾする」

寺川 「以前、レース前に不安になるって言ってたけど、その中間の泳ぎができないから、そういうのが不安につながってるんじゃない?」

上田 「モゾモゾに耐える練習。通称“モゾ練”だよ」

寺川 「キープする練習だよ」

青木 「それが一番きついんです!!」

中村 「レースの最終確認で、同じようなタイムで泳ぐ確認をすることがあるかもしれない。いつでもできるようにしっかりとね」

◆チームワーク大切

青木 「今から土台を作らなきゃ、ですね」

今井 「私は“プライド”をつけたい。リオデジャネイロ五輪に一応行っているので、オリンピアンとしてのプライドを持てって。2回目の五輪ってどうでしたか?」

全員 「(星さんを見て)3回出場!!」

星 「(2008年の北京五輪から3大会連続で出場した)私もプライドはなかった。それこそ、プライドくらい持てよって私も言われていた。難しいよね」

寺川 「自分は絶対この種目でいくんだっていう強い気持ちが大事じゃない?」

星 「この種目は私の種目だっていう気持ちは大事かもです」

上田 「チームでやってるんだから大丈夫。平井先生のチーム特有で、何年も前からそう。どんどん、どんどんチームで高めていけば、きっとみんな目標を達成できると思うよ」

白井 「先輩たちはすごいチームワークがあったんだと知りました。4人で団結して乗り切っていきたい」

今井 「こんなにレベルの高い選手が4人も集まっているのは素晴らしい環境だなと改めて思いました。しっかり4人で高め合っていきたい」

青木 「先輩方と話をして自分に足りないものに気付くことができました。(代表選考を兼ねる)4月(の日本選手権)で結果を出せるように頑張ります」

大橋 「五輪まで時間が少ない。今この瞬間を一緒にできているメンバーと協力して、叱咤(しった)激励してやっていきたい。先輩と話をして、自分の考えを整理することができました。すごくいい時間を過ごさせてもらいました」

★4選手比較表

大橋 悠依(おおはし・ゆい)1995年10月18日生まれ、24歳、身長175センチ、滋賀・彦根市出身、イトマン東進所属、主な成績:2017年世界選手権200m個人メドレー銀。19年世界選手権400m個人メドレー銅

青木玲緒樹(あおき・れおな)1995年2月24日生まれ、24歳、身長167センチ、東京・板橋区出身、ミズノ所属、主な成績:2019年世界選手権100m平泳ぎ4位

白井 璃緒(しらい・りお)1999年9月10日生まれ、20歳、身長166センチ、兵庫・宝塚市出身、東洋大所属、主な成績:2019年世界選手権200m自由形8位

今井 月(いまい・るな)2000年8月15日生まれ、19歳、身長166センチ、岐阜市出身、コカ・コーラ所属、主な成績:2016年リオデジャネイロ五輪200m個人メドレー代表



新型コロナウイルス感染拡大を受けて、来夏に延期された東京五輪を目指すアスリートに迫る連載。第2回は、競泳女子で昨夏の世界選手権400m個人メドレー銅メダリスト、大橋悠依(24)=イトマン東進=が登場する。日本女子のエースが書面でインタビューに応じ、現在のトレーニングの様子や母国で迎える大舞台への決意をつづった。 (取材構成・角かずみ)

◆非常事態宣言まで甘くみていた自分

--新型コロナウイルスが世界を震撼(しんかん)させている

「世界全体まで感染が拡大したことに驚きと脅威を感じています。(2~3月に高地合宿をしていた)スペイン滞在中、日本の状況はネットニュースで情報を得ていました。どこか甘くひとごとのように感じている自分もいましたが、滞在中にスペインで非常事態宣言が発令された状況を目の当たりにして、これは深刻な事態だと感じました。感染拡大は恐怖ですが、できる対策が多くあると思うので、本当に一人一人が甘く考えず対策に取り組むことが一番だと感じています」

--4月2日開幕予定だった五輪代表選考会を兼ねる日本選手権が中止になってしまった

「大会を開催するとなると少なくとも何百人が同じ場所に集まることになる。中止という判断は妥当だと思いましたが、いよいよ2020年だという強い思いでスタートさせた年で、スペインでの高地合宿でも良い練習が積めていた。その成果を発揮したり、自身の進歩を確認したりする機会がなくなってしまったのが、とても残念でした

--スペインでどんな手応えを得ていた

「2018年の夏前頃から自由形の泳ぎがしっくりこず、良くなったり悪くなったりの繰り返しでしたが、合宿途中に背中の動きを変えてみたところ、ガラッと泳ぎが変わってよくなりました。自分の頭の中でイメージしている泳ぎに近づいたという手応えも感じていました。平井先生(指導を受ける平井伯昌コーチ)からも泳ぎが以前と全く違い、『(体が)軽そう』といわれていました。迫る日本選手権に対して不安が全くなかったわけではないですが、とにかく自分の力を出し切りたいと思っていました」

◆ライブDVD見て自宅でダンストレ

--今はどのように気持ちを保っている

「正直、今後の大会予定が立たず先が見えないことに関しては、考えるとやはりモチベーションを保つことは難しいので、あまり考えないようにしています。今できることに取り組もうと思っています。五輪の延期が発表される前までは、手応えを感じながらも自身の目標を達成できるレベルになるためには時間が足りないかもしれないと思っていたので、この時間を絶対に無駄にせず、自分のものにしようという思いです」

--拠点とする東京・板橋区にある東洋大の施設が閉鎖。自宅でのトレーニングは

「天気の良い日は朝、20分くらいランニングをします。自宅では体幹トレーニングをするときもあれば、(アーティストの)ライブDVDを見ながら踊って運動しています。あとは体が硬くなったり、姿勢が悪くなったりしがちなので、ストレッチをたくさんしています」

◆星先輩から“金言”安心した気持ちに

--来夏の東京五輪での目標は

「行けるところまで行く、自分の力を出し切ることです。自らの発言からプレッシャーを作り出してしまうこともあったので、考え方をもっとシンプルにしようと思いました。(今年1月のサンスポの企画で2012年ロンドン、16年リオデジャネイロ両五輪の競泳女子200mバタフライ銅メダルの)星さん=顔写真=から『2015年の世界選手権で金メダルを獲得したときは何も考えずにただ全力で取り組んでいた』と聞きました。一方で翌年のリオデジャネイロ五輪の時は『前年王者だからこそ金メダルを取りたいし、取らなきゃいけないとも思っていた』ともおっしゃっていました。『金メダルを取ると公言して有言実行する選手もいれば、限界を突き詰めた先の結果が金メダルだったという選手もいると思うから、自分が追い詰められずにポジティブに頑張れる方を選んだらいいと思う』という助言をいただきました。それまで言葉に出さないと達成できないのではないかと思っていたので、そういう考え方や道があってもいいのだと安心した気持ちもありました」

--外出自粛など耐える日々を過ごす方への思い

「不安な毎日が続いていますが、今は一人一人の心掛けが感染拡大を抑えるために本当に大事だと思います。我慢が必要な日々ですが、自分自身も周りの人も守るために、できることに取り組んでいきましょう。たくさん食べて、たくさん寝て、しっかり免疫をつけましょう!!」

■大橋と星さんら座談会VTR

1月18日、平井コーチに師事する大橋、青木玲緒樹(れおな)、白井璃緒、今井月(るな)の4選手と、同コーチの指導の下、五輪でメダルを獲得した中村礼子さん、寺川綾さん、上田春佳さん、加藤ゆかさん、星奈津美さんの9人が東京・千代田区有楽町にある「キッコーマン ライブキッチン東京」に集合。経験豊富なメダリストからアドバイスをもらい、東京五輪へ気持ちを新たにした。

■自炊と母の味

滋賀・彦根市の実家に帰省することもできず、東京都内で一人暮らしを強いられている大橋。外食を控え、自炊や母・加奈枝さんからクール便で送られてくる料理を食べているという。「母の料理はほんとうにおいしい。栄養バランスが偏りやすいので、鉄分を摂取することに気を配り、フルーツジュースなどでビタミンもできる限りとるように意識しています」と明かした。



競泳日本選手権第1日は3日、東京アクアティクスセンターで行われ、400m個人メドレーの女子は2019年世界選手権銅メダルの大橋悠依(25)=イトマン東進=が4分35秒14で制した。4分37秒90で2位に入った谷川亜華葉(あげは、17)=イトマンSS=とともに日本水連の定める派遣標準記録を突破して、そろって初めての五輪代表入り。男子は五輪代表に決まっていた瀬戸大也(26)=TEAMDAIYA=が4分9秒02で勝った。井狩裕貴(20)=イトマン近大=が4分11秒88で派遣標準をクリアして2位となり、2人目の代表となった。

◆4分35秒14

スタートから一度もトップを譲らず、大橋が4分35秒14で初の五輪切符をつかんだ。ともに練習を積み、隣の5コースを泳いだ清水咲子(28)=ミキハウス=がまさかの3位で代表落ち。大橋は代表権を獲得したにもかかわらず、戸惑いの表情を浮かべた。

「17、18年とずっとさっこさん(清水)と一緒に世界で戦ってきた。(東京五輪は)さっこさんの分まで頑張ろうと思う。ずっと五輪選手になりたかった。それは素直にうれしい」

◆初の五輪へ

女子のエースながら、五輪出場は初めて。2016年の日本選手権でこの種目3位となり、わずかの差で切符を逃した悔しさを糧に躍進。17年日本選手権では日本記録を3秒24も更新して優勝し、同年の世界選手権では200m個人メドレーで銀メダルを獲得した。そんな遅咲きのヒロインが、ついに五輪への扉をこじ開けた。

25歳の大橋が、常に意識する言葉は「覚悟」だ。覚悟がなければ、苦しいレースで前半から攻めることはできず、金メダルには届かないと感じているからだ。昨冬、15年世界選手権200mバタフライ金メダルの星奈津美さんに「覚悟がまだ持てない」と相談。浮き沈みする自分の気持ちにもしっかりと向き合う大切さも覚え、一発勝負の選考レースに臨んだ。

東京五輪での最大のライバルは、カティンカ・ホッスー(31)=ハンガリー=だが、16年に4分26秒36の世界記録を樹立して以降、自己ベストから遠ざかっており、大橋にも金メダルのチャンスはある。残すレースは大会3、4日目の200m個人メドレー。2種目で五輪切符を手にし、覚悟を持って東京五輪に挑む。(角かずみ)