サンケイスポーツでは、バドミントン男子シングルスで世界ランキング1位、東京五輪代表の桃田賢斗(NTT東日本)の特集を数多く展開してきた。当時の記事を紹介する。(年齢、肩書等は掲載当時のまま)。

■生まれ 1994(平成6)年9月1日生まれ。香川・三豊市出身。

■バドミントンの魅力 駆け引き。

■兄弟姉妹 姉がひとり。

■競技を始めたきっかけ 7歳の頃、姉の練習についていったこと。

■中学から強豪で福島にある福島・富岡中に進学 小学6年で出場した全国大会で優勝し、進学を決断。優勝できなければ地元に残り、野球をやるつもりだった。

■得意技 ヘアピン。

■小さい頃の夢 プロ野球選手。

■座右の銘 毎日の積み重ねが一瞬の奇跡を生む。

■自分の性格 気分屋。

■好きな食べ物 グミ。特に硬いのが好き。

■好きな飲み物 オレンジジュース。

■視力 両目とも2・0。コンタクトいらずで、メガネに憧れる。

■宝物 今までの経験。

■試合で負けたあとにすること 嫌いなことをする。走ったり、筋トレしたりする。

■苦手 初対面の人。

■海外遠征の必需品 グミ。

■好きな異性のタイプ しっかりした人。

■休日にすること ゴロゴロ、買い物。

■好きなアーティスト ケツメイシ。

■サイズ 身長175センチ、体重71キロ。

■今までで一番悔しかったこと 19年スディルマンカップ決勝で負けたこと。

■今までで一番うれしかったこと 19年全英オープンで優勝。

■刺激を受けている人 米大リーグ、エンゼルスの大谷翔平投手。

■将来の夢 バドミントンの普及。

■握力 左右とも「45キロちょい」。

■足のサイズ 27・5センチ。

バドミントン男子シングルスで世界ランキング1位の桃田賢斗(24)=NTT東日本=が23日までに、本紙のインタビューに応じた。2016年に発覚した違法賭博問題を乗り越え、男女を通じてシングルス初の金メダルを目指す日本男子のエースが、開幕1年前の心境を語った。本紙作成のアンケートにも答えた24歳の素顔を、新連載「解体新書」(随時掲載)として紹介する。 (取材構成・角かずみ)

■謹慎で期待裏切る

2016年4月8日、当時21歳だった桃田のバドミントン人生が暗転した。違法カジノ店での賭博行為が発覚し、無期限の出場停止を科された。当時の世界ランクは2位。金メダルが期待された同年8月のリオデジャネイロ五輪に出場すらできなかった。

「オリンピック前で、自分に期待していた人や応援してくれた人の気持ちを裏切ってしまった。その思いだけでした」

謹慎中の桃田は、躍進した日本勢とは無縁の世界にいた。女子ダブルスで高橋礼華、松友美佐紀組(日本ユニシス)が金メダル、女子シングルスで奥原希望(太陽ホールディングス)が銅メダルを獲得したが、桃田は自分がいるはずだった夢の舞台を直視できなかった。

「自分自身も余裕がなかったし、周りの人の試合を見たからって、どうこうなるわけではない。そこまで見たいなとは思わなかった」

■イチの言葉が道標

盛り上がったリオデジャネイロ五輪に関する情報から距離を置く生活をおくった。光の見えないどん底にいた21歳の胸に、何気なく目にした言葉が刺さった。

「毎日の積み重ねが、一瞬の奇跡を生む」

プロ野球のオリックスや、米大リーグのマリナーズなどで活躍し、今年3月に現役を引退したイチローさんの言葉だ。日米通算4367安打を放ったレジェンドの、一日の積み重ねを大事にする姿勢を見習った。

「本当にそう思った。コツコツやっていたら、大事なとき↖↖にその成果が出てくれる。そこが胸に響いた。日々の積み重ねが大事」

イチローさんの言葉が、暗闇から抜け出す道標になった。謹慎中から苦手だったランニングやウエートトレーニングを重視。コート外ではボランティア活動に積極的に参加して子供と触れあい、バドミントンの楽しさを再認識した。

「(違法賭博問題を起こして)申し訳ないなというのは、ずっと思っている。でも、自分にしかできないこともある。あの時間はバドミントンじゃない、人として成長させてくれた時間だったのかなと思う」

■「純粋に楽しむ!!」

処分が解除されたのは、約1年後の17年5月15日。得意のヘアピン(ネット付近に飛んできたシャトルを相手コートのネット際に落とすショット)など技術の高さに、体幹の強さが加わり、競技復帰後は快進撃を続けた。謹慎中に圏外にまで落ちた世界ランクは、18年9月に日本の男子シングルスで初の1位になった。今年3月の全英オープン、4月のアジア選手権も優勝した。来夏の東京五輪で金メダルを狙える実力を付けた。

「東京五輪でこういう成績を残したいというのは一切ない。誰々に勝ちたいとかではなくて、純粋にバドミントンを楽しむ」

4年前のように周囲の期待は高まるが、桃田は足元を見つめる。開幕まで1年となった東京五輪で、バドミントンができる喜びを表現する。



【バドミントン全日本総合選手権】無観客で男女のシングルス1回戦などが行われ、1月に交通事故に巻き込まれて負傷したバドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(26)=NTT東日本=が、1回戦で約11カ月ぶりに実戦に復帰した。森口航士朗(埼玉栄高2年)に2―0のストレートで快勝し、東京五輪での金メダル獲得に向けて再スタートを切った。

◆高校生を翻弄!!

午前11時34分。桃田の止まっていた時計が、346日ぶりに再び力強く動き出した。相手の高校生を前後左右に翻弄。点差が開いた第2ゲーム中盤からは、ショットの強さやコースを試す余裕を見せ、一度もリードを許さず36分で復帰戦を終えた。

「独特の試合の緊張感、試合前のいてもたってもいられないソワソワ感は久しぶりだったし、コートに帰ってきたと感じた」

今季初戦だったマレーシアでの国際大会を制した翌日の1月13日。帰国のために乗ったワゴン車が事故を起こした。顔面3カ所の裂傷と全身打撲を負い、運転手は即死。死を間近に感じた恐怖を拭えないまま帰国し、その後、右目の眼窩底骨折が判明した。

手術を経て2月29日に練習を再開。直後はまだシャトルが二重に見え、抑えきれない不安を周囲から「ゾッとする」と言われるほどの練習量で抑え込んだ。「つらいときもあったけど、自分のためにというよりも、周りの支えがあったから心が折れるわけにはいかないと思った。それが自分を強くさせてくれた」。厄災を乗り越え、精神力にも磨きがかかった。

◆3連覇へ課題も

東京五輪の金メダル候補として期待を集める桃田。新型コロナウイルスの影響もあり、この日までずれ込んだ復帰戦では「相手の動きが見えていなかった」と課題も口にしたが、実戦の場に戻ってきたことは金メダルへの大きな一歩。きょう24日の2回戦でも感謝の思いを胸に、大会3連覇へ突き進む。(角かずみ)

<桃田TALK>

■試合勘のずれ「正直あった」

――初戦を振り返って

「緊張からミスが多い場面はあったが、動きやシャトルの感覚は悪くなかった」

――試合勘のずれは

「正直あった。相手をうまく利用して相手の力を自分のパワーに変えるタイプだけど、今日は自分の打ちたいショットを打ってしまった。少し相手の動きが見えていないと感じた」

――強化した攻撃面は

「攻撃するときとしない時のめりはり、一瞬の判断はもっと考えないといけない」

――違法賭博問題からの復帰戦と今回の違いは

「(会場の雰囲気が)圧倒的に今日の方が温かかった。前は周りの人たちの様子をうかがいながらプレーしているところがあった。今日はのびのびと『復活して戻ってきたよ』というのを見せられたと思う」

――今大会の目標

「もちろん目標は優勝だけど、先は見すぎず、一つ一つ自分らしく感謝の気持ちを忘れずにプレーできたらいい」


【バドミントン全日本総合選手権】東京五輪金メダル候補が復活V!! 各種目の決勝が無観客で行われ、男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(26)=NTT東日本=が、世界11位の常山幹太(24)=トナミ運輸=に1時間20分の激戦の末に逆転勝ちし、3年連続4度目の優勝を果たした。今年1月のマレーシア遠征中に交通事故に遭い、右眼窩底(がんかてい)骨折を負って以来11カ月ぶりの実戦で優勝。来夏に延期された東京五輪での金メダルへ、弾みをつけた。

◆1時間20分熱戦制す

真っ先に桃田が目をやったのは、客席に座っていたチーム関係者だった。左手を突き上げ、雄たけびをあげる。1時間20分の大接戦を気持ちで乗り切った。逆転勝ちで3連覇を決めた。

「大事に大事に行き過ぎて、一度も王者としての風格が自分の中では感じられなかった。今日のレベルじゃ、まだ〝柱〟(はしら)にはなれない。〝感謝の呼吸〟はちょっと披露できた」

人気漫画で大会期間中に読んだという『鬼滅の刃』に登場し、呼吸の技を繰り出す剣士、柱に例えて自らの課題を口にした。

◆地道な練習が後押し

互いに1ゲームずつ取り合って迎えたファイナルゲーム。一進一退の攻防が続いたが、リハビリ中、練習に制限がかかるなか地道に取り組んできた走り込みが、桃田を後押しした。最も苦しいラストにもう一段ギアを上げ、18―17から3連続得点。「引き出しも何も、もうなかった」と最後は気持ちで足を動かし、頂点に立った。

1月に交通事故に巻き込まれて負傷。トラックの運転手が死亡するなど、選手生命に影響を与えるような大事故だった。コートを離れた11カ月の空白は、世界王者の桃田から絶対的な自信を奪っていた。「去年の全日本は圧倒的な自信があったけど、今回は誰が優勝するかわからないスタートだった」と振り返る。1回戦の前日から緊張のためなかなか眠れず、宿舎では大人気漫画の『キングダム』や『鬼滅の刃』を読み、競技のことをできるだけ考えないように工夫した。

「日本のエースとしてしっかり自覚を持って挑んでいきたい」

けがで一時出場が危ぶまれた東京五輪は、コロナ禍で1年延期された。次戦は来年1月に行われるタイでの国際大会。交通事故に遭った今年1月以来、1年ぶりとなる国際大会で課題を克服し、来夏の祭典へつなげる。(角かずみ)

鬼滅の刃

 漫画誌「週刊少年ジャンプ」で2016年2月~20年5月に連載された大正時代が舞台の物語。主人公、竈門炭治郎(かまど・たんじろう)が鬼にされた妹、禰豆子を人間に戻すため、仲間らと鬼を倒しながら成長する。人間は「全集中の呼吸」と呼ばれる奥義で、鬼に対抗する。水の呼吸、炎の呼吸などの特性が異なる剣術を駆使し戦う。「柱」は、竈門が所属する鬼を狩る組織、鬼殺隊で最上位の実力を持つ剣士。公開中の「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」は興行記録を次々と塗り替えている。



バドミントン男子シングルス世界ランキング1位で、中高の6年間を福島県で過ごした桃田賢斗(26)=NTT東日本=が8日までに取材に応じ、11日に発生から節目の10年を迎える東日本大震災について胸の内を明かした。1年2カ月ぶりの国際大会出場となる17日開幕の全英オープン(バーミンガム)への不安や、今夏の東京五輪で改めて金メダルを目指す決意を示した。(取材構成・角かずみ)

■中高の6年間を過ごし

富岡一中、富岡高と6年間を福島で過ごした桃田。「第二の故郷」と表現する場所は、10年前の震災によって大きく変わった。震災当日、16歳の桃田は強化練習のため、インドネシアにいた。テレビの画面に映し出されたシーンを受け止めることができなかった。

「仙台空港が映っていて、ほとんど流されているような感じだった。地震が起きて津波が発生したんだなと」

電話は回線がこみ合い、日本の知人と夜までつながらなかった。「このまま帰れないかもしれない」。孤独感にさいなまれたが、なんとか翌日に帰国。学校の寮には戻れず、実家のある香川県に向かった。学校で被害に遭ったチームメートも解散し、仲間と再会したのは、震災から2カ月後の5月。避難場所に指定されていた福島県会津地方の猪苗代体育館で、部の練習が再開された。

■「感動した」震災後練習

「めちゃくちゃ感動した。『生きていたんだ』とまではいかないけど、本当にすごくうれしかった」。集合してからのチームは家族のような雰囲気だった。練習時間や場所、物資は限られていたが「そこから本当に濃いバドミントン生活ができた」。これまで以上にストイックに練習に取り組み、今の土台を築き上げた。

2016年、違法賭博問題が発覚し、同年のリオデジャネイロ五輪出場を絶たれた。「たくさんの方のことを裏切ってしまったし、迷惑をかけてしまった」。17年の夏休みに福島を訪れ、後輩の練習相手を買って出た。生き生きとした姿は、どん底に落ちた自分自身のエネルギーに変わった。20年1月に交通事故に巻き込まれた後も福島を再訪。「第二の故郷」は、桃田にとってかけがえのない場所だ。

■東京五輪で「金メダルを」

17日には全英オープンが控える。交通事故やコロナ感染などもあり、国際大会への出場は1年2カ月ぶり。「不安要素がすごく多い。自信を持って『勝ちます』とは言い切れないけど、東京五輪に向けた大事な一戦になってくる」と強い気持ちを胸に国際大会に臨む。

東京五輪の1年延期で、震災から10年目の夏、祭典を迎える。「10年の節目で、自分の状態がすごくいいときに、東京で五輪が開催されるというのは何かの縁がある。自分が悔いなく戦うのもそうだし、元気や感動を与えられるような試合をして金メダルを取れたらいい」。震災から10年。さまざまな苦難を乗り越え、桃田が東京五輪のコートで輝く。

★恩師が語る桃田「いたずらっ子」

桃田が通学した富岡高は、原発事故で少子化が加速。休校を経て15年4月開校の「ふたば未来学園高」(広野町)に引き継がれた。19年4月にはふたば未来学園高に付属中が開校し、バドミントン部専用の体育館が整備されたため、部の拠点は猪苗代町から同校へ移った。現在も中学生を指導する斎藤亘監督(49)は当時の桃田について「いたずらっ子ですから、私からも担任からも怒られることはありました。けど、クラスでも輪の中心に彼がいました」と振り返り、今夏の活躍を願った。