16日、DeNAとのCSファイナルS第2戦で5回3失点降板となった阪神・才木浩人 〝七不思議〟と言えば、大げさか。阪神・才木浩人がポストシーズン(PS)になると、勝てない。3年前から続く負の連鎖を断ち切りたい。今度こそ…という状況で登板した10月16日のDeNAとのCSファイナルS第2戦(甲子園)でも、5回3失点降板。一回に2点の援護を受けながら、三回に3長短打で追いつかれ、四回には牧秀悟に勝ち越しソロを浴びた。延長十回、森下翔太のサヨナラ2ランで劇的勝利を収め、第3戦も完勝。チームは2年ぶり8度目の日本S進出を決めた。ただ才木はCS初登板だった2022年、23年日本S、24、25年CSで計4試合に投げて1敗。防御率3・63で勝ち運に恵まれない状況は変わらなかった。
「切り替えてというか、これで終わりはないので。自分の登板に向けて、次はいいピッチングで、自分がチームを鼓舞できるように、やっていきたいと思います」
10月に入って、今オフにポスティングシステム(PS)を利用した米大リーグ挑戦を目指すことが判明。24年12月の契約更改交渉後の会見で表明していた通り、準備に着手。すでに代理人と契約し、球団も前向きに検討しており、夢が実現する可能性は一気に高まった。
皮肉にも、今回の試合を複数のMLB球団の担当者が視察していた。CSという短期決戦。長いイニングを目指すよりも、初回から全力投球。先に点を与えない。後の先ピッチは不要だ。その投手の基本能力がわかる状況下での5回3失点降板を、どう見ていたのか。「魅力のある選手」「興味がある」といった表向きコメントには興味はない。聞きたいのは真の評価。少なくとも、甲子園で同点とされ、左中間に本塁打を運ばれた投球内容はプラスには働かない。
「日本を代表する選手」といったスカウト陣の評価を受け、海を渡って、成績を残せなかった選手が何人いたことか。今季、DeNAに日本球界復帰を果たした藤浪晋太郎とヤクルトを選んだ青柳晃洋が典型的な例だ。佐々木朗希はドジャースの球団力で、守護神にまで成長した。メジャーに行けば、レベルの高い野球に挑戦ができる。多額の年俸も手に入れることも可能だ。ただし「万能」ではない。「限界」だってある。悲しいことに、夢を追いかけて、米大陸に足を踏み入れた先の2人が、その象徴だ。
才木は23年8勝5敗、24年13勝3敗を経て、今季は24試合登板で12勝6敗。防御率1・55で初のタイトルを獲得した。阪神のエースであり、他球団から注目される存在であることは間違いない。しかし短期決戦で力を発揮できない右腕に、メジャー球団は強い興味を示すのか。争奪戦となるのか。それなりの金額を用意するのか。そのような図式は浮かばない。
幸いにもチームは25日、パ・リーグ本拠地で開幕する日本シリーズに向かう。評価を少しでも上向きにさせるチャンスはまだある。本人にしてみれば、チームの勝利優先。「次はビシっと行けるような、という感じですね。一発勝負で負けられない試合で、どれだけ、いいピッチングができるか、が大事なことかなと。次はしっかりとできるようにしたい」。この姿勢が次のステージにつながる。MLB球団が予算から「サイキ」のために資金を捻出し、ノドから手が出るほどほしい存在…とは言えない立場は、本人もわかっている。23年以来、3度目の日本一と逆転の〝アメリカ切符〟。両手で悲願をつかみたい。
■稲見 誠(いなみ まこと) 1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。