そうか、あの記録は今なお球界に君臨しているんだなぁ…
と、22年前の1994年シーズンを懐かしくフラッシュバックさせてくれたのは、阪神・狩野恵輔外野手(34)がシーズン代打打点記録を目指すという記事。記録保持者はチームの大先輩でもある真弓明信元阪神監督。その記録「30打点」がいかにすごいかは、目指す狩野が今季11打点でセ・リーグ1位タイだったことで想像がつくだろう。
「あの年の真弓さんはすさまじかったで」と胸を張って言えたらカッコイイのだが、実は私を含めて当時の阪神担当は恥ずかしながら全員不合格だ。私が書いた当時の記事の書き出しがすべてを物語る。
「やっぱり千両役者だ。真弓がシーズン代打日本記録を更新していた」
更新していた…って、どういうことか? そう、真弓がシーズン代打打点の日本記録を塗り替えた試合当日は何も触れず、通り過ぎてから慌てて書いたのだ。
ちなみにこの年、真弓はわずか17安打で30打点を挙げている。いかに好機に強かったか-。当然、マヌケな担当記者でも盛り上がる。
「最近の真弓さん、勝負強いな」
「代打での打点記録ってあるのかな? どのぐらいかな?」
そんな会話から、ようやく調べてみたら、ずっと以前に超えていた、というお粗末な話。代打の神様と呼ばれた八木裕、桧山進次郎ら阪神勢だけでなく、球界の必殺仕事人たちの誰もたどり着けない大記録は、担当記者の怠慢? により、人知れず達成されていたものだったのだ。
後に真弓に記録達成の秘訣を聞くと、単純明快なひと言が返ってきた。
「ノンプレッシャー。誰も、何も言ってこなかったもん」
余計なプレッシャーのかからない状態が、力を発揮できる1打席1打席を生んだという。どこの新聞も報じないから、耳に入ることもない。ということは、私の怠慢も大記録の一因か(笑)。
そういう意味では、現在のプレーヤーは大変。優秀な21世紀のプロ野球担当記者は日々、データを水も漏らさぬように調べに調べ、その質問を毎日、試合前後に浴びせかける。真弓が証言する「ノンプレッシャー」とはほど遠い世界だ。
2017年シーズン、阪神の記事が氾濫する関西マスコミの真っただ中にいる狩野は、おそらく「1打点目」から大騒ぎされてしまうんだろうな…とちょっぴり心配しつつ、記録に迫るストーリーを楽しみにしたい。(上田雅昭)