マツダスタジアムを訪れるたび、気になっていた。青いポロシャツの背中に「スポーツ ボランティア」のロゴ。大半がおじいちゃん、おばあちゃんとお見受けするシニア世代なのだが、とにかく元気で、そして超楽しそうなのだ。
25年ぶりのリーグ制覇までマジックナンバー「4」で迎えた9月6日の中日戦。試合前に関係者サロンでシニア軍団に遭遇した。休憩中らしく、弁当をつつきながら、カープ談議に花が咲く。「歴史的瞬間じゃ!」。四半世紀ぶりの歓喜の時を目前に、弾む思いが伝わってくる。
「あの…。皆さん何をされているんでしょう」。尋ねると、70代のボランティアさんが「チケットもぎりのアルバイトさんの休憩中に交代してあげたり、場内案内したり…。一番は試合を見て、お客さんの話し相手になることじゃね」と教えてくれた。
生き字引の話を聞けば、新参『カープ女子』の知識も倍増。酔客や荒くれ者とて一目置くはずだ。マツダスタジアムのほのぼのした雰囲気は、ボランティアの存在によるところも大きいのだろうと納得した。
「スポーツボランティア」は広島市の外郭団体「広島市スポーツ協会」が派遣している。年に2度募集があり、参加資格も年齢制限もなし。マツダスタジアムでの主催試合やJリーグ広島の主催試合などの活動が主だ。
同協会の担当者によると、老若男女約300人が現在登録し、活動したい試合日の希望を出せるが、「野球は平日の午後からの活動になるので、仕事をリタイアされた世代の方が多いです」とのこと。無報酬だが、球団の厚意で軽食とクオカード1000円分が支給されるという。
この方式は昨今、各自治体から調査が相次ぐなど注目が集まっている。球界では今季、千葉ロッテが「マリーンズ・ボランティア」を始動し、広報担当は「地元の方と一緒に活動していくことで、地域密着を深めていきたい」と期待する。
米大リーグではボランティアにとどまらず、球場スタッフに地域のお年寄りや障がい者を採用し、雇用を生み出す形での地域貢献も盛んだ。
2035年には3人に1人が65歳以上という超高齢化社会が来る。お年寄りが生きがいを持ち、コミュニティーに参加することで放つ活力は、スポーツ文化を豊かにもする。マツダスタジアムの空気と、誇らしげなシニア軍団の背中に理想形を見た気がした。