【球界ここだけの話(2207)】
成人式に出席した中日・根尾【拡大】
約2年半前の2018年9月、大阪桐蔭高の中心選手として甲子園春夏連覇を成し遂げた根尾昂(現中日)は、高校日本代表としてU18アジア選手権(宮崎)に出場していた。直前の選手権大会決勝で激突した金足農高(秋田)・吉田輝星(現日本ハム)はチームメートだ。
当時ドラ1候補の2人がどんな会話をしているのかは気になるところ。あるときはお互いの部で行ってきた練習について談義を交わしたという。秋田では冬の積雪量が多いため屋外でボールを使う活動が難しく、雪上でのダッシュなど下半身を鍛えるトレーニングが多い。吉田輝から聞いた話を明かしてくれた根尾だが「まあ、そうだろうなと思いましたよ」とさらりと言った。
ふと、その大人びた言葉を思い出したのは先日1月3日、取材で根尾が参加する成人式を取材するために岐阜・飛騨市を訪れたときのことだ。電車の車窓から見える、彼が育った町の景色は一面真っ白の銀世界。線路の両サイドは車両の天井よりも高く雪が積もっている。吉田輝の話を「そうだろうな」と思うことにも自然と納得した。
成人式の会場では、古川中2、3年時の根尾に体育の授業を教えていた中村裕幸さん(56)が思い出話を披露してくれた。
「ソフトボールの授業では飛ばしすぎるので『もう打つな、守りだけ』と話したこともある。でも、バットコントロールで仲間のところに打ってボールを捕らせたり、自分も仲間を楽しい授業をやってくれた」
同級生も下級生も関係なく、みんなに優しい、仲間思いの姿は印象的だったという。春季キャンプまで1カ月を切ったこの時期、成人式には出席せず練習に明け暮れる若手選手も多い。多忙な中、コロナ禍で同窓会が開催できない状況下でも、仲間に顔を見せに来てくれた根尾の行動を、恩師は喜ぶ。
その根尾は「東海地区はドラゴンズで盛り上がると、小さいころから実感していますし、ドラゴンズが優勝した時もすごく盛り上がったことを覚えている。学校でハイタッチをして喜んだりもしていた」と回顧。いまはそのドラゴンズの一員として夢を与える立場になった。今季は遊撃一点を見つめる勝負のシーズン。降り積もった雪が解ける頃、故郷にも活躍のニュースを届けたい。(須藤佳裕)