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【元虎番キャップ・稲見誠の話】連覇内閣から3人退団に2軍も…阪神の難産V→CS敗退と無関係じゃない異常事態

阪神・藤川球児監督と話し込む小谷野栄一打撃チーフコーチ(左端)、上本博紀打撃コーチ(71番)、藤本敦士総合コーチ(右端)=2025年3月25日撮影

松井秀喜氏(52)が巨人監督に電撃就任した。「立ち向かう理由ができたので非常に楽しみというか嬉しいです」。工藤公康氏(63)の中日監督就任が既に発表されているセ・リーグは来季から構図が大きく変わる。「向かって行きやすいですね。みなさん名球会の先輩ですから。若い自分としては、ガツンと向かって行きやすい。『さぁ行こうか』という感じにはなりやすいですよね」。さらにこうも続けた。

「誰に向けてチーム作りをするか、どこに向けてチーム作りをするのか、においては気持ちが上がりますよね。楽しみというか、『さぁやろう』という風になりますよね」

来季、リーグ3連覇を目指す阪神・藤川球児監督(46)は『さぁ行こうか』『さぁやろう』というフレーズを使って、高ぶる気持ちを表現したが、私だったら心から笑えない。会社なら自分の手足となり、部下の指導を任せているキーマンが3人も退職を申し出た形だ。前代未聞の出来事に『さぁ行こうか』と言えない。もっとも、そう言えるから、監督が務まるのだろうが、いずれにしても、異例であり、極めて異常な事態に直面した。

誰に向けてのチーム作りなのか。藤川監督誕生と同時に同い年の小谷野栄一氏が打撃チーフコーチに招かれた。参謀役として年上の藤本敦士氏が総合コーチを託された。上本博紀氏は2軍野手コーチから1軍打撃コーチに配置転換となった。

今回、野手の3コーチが退団を申し入れた。ひとりは「総合」で、もうひとりは「チーフ」。普通のコーチとは違う。表に出ない理由や事情があるのだろうが、V逸したわけではない。球団初の連覇を成し遂げたコーチが、CSファイナル敗退後に揃って、辞意を球団に伝えた。3人には失礼ながら、ユニホームを脱げば「引く手あまた」という状況ではない。野球人は現場が一番だとすれば、よほどのことがない限り、この決断はない。よほどのことがあった…と推測できる。

1番から5人がズラリと並ぶ打線。先発3本柱がけん引する投手陣。なのに、リーグ優勝は開幕139試合目での難産だった。七転八倒のゴールで、終わってみれば80勝に届かなかった。昨季のような独走は無理だとしても、個人的にはV争いが成立すること自体が不思議で仕方がなかった。CSファイナルSでは、まさかの4連敗敗退。昭和の時代と違って、選手が「監督のために…」「コーチのために…」とは思わない。むしろ逆で絆がなくても勝てる。ただ首脳陣の異変には敏感だ。

アドバンテージを含んで1勝1敗で迎えたDeNAと第2戦の七回2死一、二塁で、立石正広が代打で空振り三振に倒れた。虎将はこの場面で打席に向かう新人に直接声をかけた。理由は「誰かに任せるより自分が伝えた方が早い」「任せるより自分が出て、何とかしなければというところも、それが私の責任でもあります」。後付け理由はいくらでも挙げられるが、今思えば意味深な発言だった。

小谷野氏同様、藤川監督と同い年の梵英心2軍打撃コーチも2年間の指導を経て、退団を申し入れた。個人的事情か上司との問題か、はたまた職場環境か…。4人が「もうやれない」と同時に決断した。ここまで続けば、そのウラに何かがあると普通は感じる。

巨人は高橋由伸氏のヘッドコーチ就任が囁かれている。指揮官としてリーグ優勝3度、日本一5度の実績を誇る工藤監督はセ・パ両リーグで本塁打王を獲得したOB山崎武司氏に1軍打撃コーチとして協力を求める方針だ。佐藤輝明がポスティングシステムでの米球界挑戦を容認されたことで、三冠王不在打線となる可能性が極めて高い阪神は誰が藤川政権に入閣するのか。報道では球団OBの坪井智哉、的場寛一の両氏の名前が挙がっている。巨人OBの矢野謙次氏もまた同学年だ。抜本的改革が必要だとの論調はあるが、ボスが同一人物なら、それは難しい。来季に暗い影を差す今回の離脱。4人の退団は偶然ではないと思う。

■稲見 誠(いなみ まこと) 1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在はサンケイスポーツコンテンツビジネス局嘱託。

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