7月30日、アスリート等に関する誹謗中傷対策事業について会見を行った谷本歩実JOC理事(左)と三阪洋行JPC委員長 日本オリンピック委員会(JOC)と日本パラリンピック委員会(JPC)は7月30日、東京都内で会見を開き、2025年度から始まったアスリートの誹謗中傷対策事業をまとめた報告書を公表した。その会場でマイクを握ったJPCの三阪洋行委員長の言葉が耳に残っている。
「今はスマホでニュースを読んでリアクションできる環境になった。読み終えたとき、『選手の結果に対してどうこう言ってやろう』より、『そんな道のりがあってここまで来たんだ』という感情になれば、コメントを打つときの気持ちも変わる。選手のそれまでの道のりを伝えていただけたら」
SNSを中心とした選手への誹謗中傷は世界中で大きな問題となっている。会見では、2月のミラノ・コルティナ冬季五輪で35万件以上の誹謗中傷が疑われる書き込みがSNSやニュースサイトで確認され、うち1913件を削除要請したと発表した。
担当者によると五輪関連の投稿の中で誹謗中傷が疑われるものは「全体の1、2%」。ただ、その少数の投稿がアスリートの胸に深く突き刺さる。三阪委員長は「ひとつの言葉で自分の全てが否定されるような気持ちになる。落ち込んでしまい、競技から退く選手もいた」と語る。
JOCとJPCは、誹謗中傷対策の一環として「その道のりに、賞賛を」という言葉を掲載した啓蒙ポスター作成。また、俳優でタレントの亀梨和也さんがナレーションを担当する啓蒙動画を制作し、ホームページで公開している。動画内では、五輪とパラリンピックの悲喜こもごもを捉えた映像に、亀梨さんの次のような言葉が重なる。
「人生のほとんどを捧げ、私たちに夢を見させてくれたアスリートたち。そこに必要なのは、心ない言葉だろうか。私たちにできることは、彼らのこれまでの努力をたたえること。再び立ち上がり、新たな道を歩む背中をそっと押す言葉を伝えること。ここまでの、そしてここからの道のりに賞賛を贈ろう」
誹謗中傷対策は、本格的にスタートしてまだ1年余り。大規模な大会のたびに試行錯誤を繰り返しており、9月に開幕する愛知・名古屋アジア大会でも行われる。
三阪委員長は「誹謗中傷を目にすると、何かをやろうとしたら批判されると思い、一歩踏み出すことに対してネガティブになってしまう。誰でも挑戦していいんだと思える文化をつくることが非常に重要」と意義を語り、「スポーツ界のみならず、ひいては誰もが挑戦できる世の中になれば」と願いを込めた。(鈴木和希)