会見後に高木美帆から報道陣に配られたメッセージカード=東京・銀座(撮影・佐藤徳昭) 人柄がにじみ出た会見だった。スピードスケートの日本女子を長くリードしてきた高木美帆さんが6日、東京都内で現役引退を表明。五輪で日本女子最多となる通算10個のメダルを獲得した第一人者の言葉を聞こうと、会見には計111人(オンラインを含む)もの報道陣が詰めかけた。
冒頭、高木さんはシーズン中にはあまり見せなかった柔和な表情で、こう語ってから会見を始めた。
「メディアとアスリートではなく、人としてつながれたみなさんとお話しする機会を大切にしたい。みなさんのおかげでここまで来ることができた。今日は一人一人の顔を見ながら話せたら」
高木さんの取材に携わった期間は現役最後の1年ほどだったが、いつでも誠実に取材対応している姿が印象的だった。試合直後であっても、決まり文句のような言葉で回答することはない。質問を受けてから、一呼吸置いて考え、できる限り丁寧に言葉を紡ぐ。そんなイメージだ。五輪シーズン開幕直前には、調子が上がらない自身のスケートを「中ぶらりん」と表現するなど、不安なことも包み隠さずに取材の場で打ち明けていた。
そんな高木さんは、会見では異例と言える2時間もの長時間をかけて、可能な限りの質問に回答。さらに終了後には、自ら会見場の出口付近に立ち、退出する報道陣に直筆のメッセージが印刷されたカードを手渡していた(記されていた内容は以下の通り)。
「みなさまの報道のおかげで高木美帆の言葉や滑りを世の中に伝えることができ、スピードスケートを応援してくださる方とつながることができました。そして、みなさまとの対話で成長できたところもたくさんありました。長い間、取り上げていただきありがとうございました。高木美帆」
日本のスピードスケート界の後輩はもちろん、他国の選手やファンからも尊敬され、たたえられてきたレジェンド。その姿の背景には、スケートの実力だけではなく、気配りや感謝を大切にする人間力の存在があった。(鈴木和希)