■1月23日 わがもの顔で危険走行する自転車を歩行者が辛うじてよけることもある歩道に、新たな〝厄介者〟が乗り入れてくるのか。警察庁は現在は運転免許が必要な電動キックボードを自転車並みに手軽に乗れるよう7月1日から改正道交法を施行する。16歳から免許不要、時速6キロ以下で自転車が通行できる区間なら歩道も走行可能という。
ちょっと待った、といいたい。4月からは頭部損傷事故防止のため、自転車でのヘルメット着用を罰則はないものの全年齢で「努力義務」とする改正道交法が施行されることになっている。片方は引き締め、片方で信じられないほどの緩めよう。どう考えても矛盾している。
立ち乗りの電動キックボードは傍で見る限りは不安定で、車の合間を縫って走っているのを見るとヒヤヒヤする。普及に伴い事故も増え20年からの3年間で69件(警察庁)で昨年9月には都内で50代の男性が転倒して死亡している。乗りこなすには一定のテクニックが必要にも見える。
〝ながら運転〟の危険性などに詳しい愛知工科大の小塚一宏名誉教授に聞くと「スマホを見ながらの運転は19年の道交法改正で厳罰化され半減した。キックボードは事故が増加しているのに緩めるとはびっくりした」。何か起きてからこれはいかんと法改正に動くのが日本だが、小塚氏は「やっぱりまずかったか、と改正前から予見できるほどだ」と指摘する。
警察庁は「便宜性と安全性を合わせて追求したい」としているが、背景には外国人観光客の需要に応えるシェアリングサービスの充実という狙いもあるのでは、との声も聞こえる。ともあれ本当に免許なしでいいのか、もう一度よく検討してもらいたい。(今村忠)
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