球団間の垣根もほぼなくなりつつあり、今オフの阪神でも「あの選手があの選手に弟子入り⁈」という、聞いているだけでワクワクするような組み合わせの合同自主トレが数件、実現している。
巨人・菅野と藤浪、同じく巨人・岡本和と井上などは、記事にする記者の身でも「一体どんな影響を受けて変わって行くんだろう」と胸が躍ってしまうような案件だが、コーチの立場では必ずしも〝大賛成ではない〟らしい。春季キャンプを目前に控え、率直な意見を聞かせてくれたのは今季からタテジマに袖を通す藤井康雄1、2軍巡回打撃コーチだった。
「それぞれみんな自主トレへ行って、いろんな人間と練習している、いろんなトレーナーが付いていろんなことをやっているだろうから、また、わけが分からなくなっているヤツもいるん違うかなと思うけどね(笑)」
もちろん口調は柔らかく、選手の気持ちも十分に理解した上での言葉だったが、ちょっぴり心配もあるようすだった。新しいことを吸収したい、もっと成長したいと願うのはプロのアスリートとして当然のこと。だが、実戦も多く組まれシーズンへと突き進んでいく春季キャンプで、一気に変えた、変わってしまった感覚を調整していくのは大変なことだ。藤井コーチはこうも語ってくれた。
「俺もそうやったけど、秋口から自分の頭の中ではすごい良いイメージで『あっ、来季はこれでイケる!』と思いながらね、やっていくんだけど。実際に実戦に入っていくと『いや、違うわ、やっぱり』というようなことはよくある」
昨年11月の秋季練習では、チームに合流後すぐに「4スタンス理論」のエキスを選手らに注入した。体や体の使い方からタイプを診断し、それぞれに合った効果的な動きを目指す理論をアツく説いたが、同理論を知り、自分のタイプを知っておくことで〝迷子になる〟こともなくなるという。
「4スタンスは『これをやったら俺ってダメになるな』とか『これは自分に合っているな』というのも分かってくる。そういう意味ではこれからそういうのをしっかり教えていきたいですね」
いろんなことを吸収できた夢のような自主トレの期間から、結果が問われる勝負の季節へ移っていく。「4スタンス理論」はきっと、どん欲に成長を目指す選手たちの道しるべになる。(長友孝輔)
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