その年の近鉄の優勝旅行は米ハワイ。私はカナダ・トロントのウインターミーティングの取材に飛び、その会場で新任の阪神監督ブレイザーを取材した。なんとブレイザーはこっちの顔をみて「何かいい情報はないか?」という。鳴り物入りで外国人監督を採用した阪神・小津球団社長が聞いたら泣くような、ブレイザーの情報の無さだった。その直前のドラフトで阪神が6球団競合の末に獲得した岡田彰布を「どう使うつもりか?」と質問したらブレイザーは露骨に嫌な顔をした。「オカダ? もちろん使うさ」とは、ひと言も発せられなかった。新人はとりあえず2軍で鍛えるとノー天気発言。
このウインターミーティングにパの優勝監督西本幸雄も出席していた。途中で西本さんとナイアガラの滝を見物に出かけた。その時「阪神は相思相愛の岡田彰布を引き当てましたが…」と語りかけたが…彼は右に初冬の荒野、左にオンタリオ湖のサザ波をみつめながら「…」と無言のままだった。他球団のことを俺はいわないという姿勢だ。西本幸雄はとにかく無口の将だった。