22日の甲子園での阪神戦終了後、交流戦優勝監督インタビューを受けるソフトバンク・小久保裕紀監督 あちこちから問い合わせが来た〝案件〟がある。22日の甲子園。ソフトバンクが勝利して、交流戦の優勝を決めた(実際には先に日本ハムが敗れて優勝は決まっていたけれど)、その試合後の優勝監督インタビュー。小久保監督はこう発した。
「秋にはセ・リーグ1位の阪神さんと戦えるように頑張りたいと思います」
これに対して、批判の声が巻き起こっているという。パ・リーグではまだ1位でもないのに、日本シリーズの話をするのはおかしい、とか。セ・リーグの他の5球団に失礼だ、とか。撤回しろ、とか。阪神ファンはタテジマOBの新庄監督率いる日本ハムと頂上決戦をしたいと思っている、とか。
現場の雰囲気が、どうだったのかという問い合わせが、筆者の下に寄せられたのだ。あの瞬間、両チームの担当記者は取材のため、ベンチ裏へ移動していた。スタンドの記者席で、目撃していた記者は極めて少なかった。数少ないリアル目撃者として言わせてもらうなら、すごく普通のインタビューだったのは確かだ。
当日の観衆は、4万1000人ぐらいが阪神ファン。残る1000人ぐらいがホークスファン。その大半が左翼席上段に陣取って、あとはポツンポツンと、という感じ。ソフトバンクからすれば、アウエー感は半端なかった。だから、三塁側ベンチ前で始まった小久保監督のインタビューも、目の前はほぼ阪神ファン。本来なら、試合に負けてすぐに家路に就くファンが大半だが、なぜか、この日は阪神のレプリカユニホームに身を包んだファンが大勢、残っていた。
最近のファンは、礼儀正しい。相手球団にもリスペクト。だから相手監督のインタビューも、敬意を持って聴いていたように映った。そして、冒頭の発言。その瞬間を見ていた。一斉に拍手が起こったのだ。結構、大きな拍手が甲子園の三塁側スタンドから巻き起こった。どうみても大喜びしている光景だった。
阪神ファンからすれば、交流戦王者の指揮官に「日本シリーズでまた戦いましょう」の趣旨の発言をしてもらって、気分が悪いはずがない。一方、たぶん、小久保監督も、目の前にいっぱい残っている阪神ファンへのリップサービスの思いが芽生えたとしても不思議ではない。
普段はホークスファンに囲まれた状況でしか、行ったことがない優勝インタビューが、全く異質な状況で行われた。臨機応変、ウイットがきいた、ステキなインタビューに感じた。なぜ、あのインタビューが「他球団に失礼」とか「阪神ファンは日本ハムと対戦を望んでいる」とか、批判を浴びなければいけないのか、全く理解できない。他の監督がビジター球場で優勝を決めたら、そこのファンの前で「日本シリーズで会いましょう」と言って、何が問題なのか。
阪神戦をずっと見守っている立場から言わせてもらっても、交流戦で強さを感じたのはソフトバンクだった。西武、楽天にはそれぞれ3連敗を喫したが、選手起用がうまく行っていれば、結末は変わっていた印象がある。でも、ソフトバンクはやっぱり戦力が上だった。だから、ソフトバンクとの日本シリーズも、「あったらいいな」と思う。もちろん、日本ハムでも、西武でも。とにかく、セ・リーグを勝ち抜いて、頂上決戦をしたい。
ファンが持論を展開するのは自由。でも、あんまり不平不満ばかり言っていたら、監督だって嫌になる。優勝監督インタビューがなくなったら…。そっちのほうがファンにとっては嫌では?
■上田 雅昭(うえだ・まさあき) 1962(昭和37)年8月24日生まれ、京都市生まれ。86年入社。近鉄、オリックス、阪神を担当。30年近くプロ野球を見てきたが、担当球団が一度も優勝していないのが自慢(?)