延長十四回、木俣に本塁打を浴び、力尽きた江夏。伝説の熱投だった ことし4月10日、佐々木朗希(ロッテ)が達成してしまったから、完全試合の難易度を正しく理解していない人が増えてしまった。佐々木の前は平成の時代、28年前の槙原寛己(巨人)。その前は昭和の時代、44年前の今井雄太郎(阪急)。まずお目にかかれない大偉業…のはずだった。
完全試合をさらに身近に感じさせる試合があった。5月6日の中日-阪神(バンテリンドーム)。大野雄大(中日)は九回まで「完全」。阪神打線は打てそうな気配すらなかった。ただ、中日も大野雄を援護できない。迎えた延長十回2死。佐藤輝が右中間二塁打を放って、辛うじて大記録は阻止したが、誰もが「大野はそのうち達成するだろう」と思い描いたものだ。
快挙寸前の快投の目撃者、当時中日担当だった須藤佳裕は慌てふためいたことが強烈な印象だった。
「完全試合ですからねぇ。つまらない原稿だけは書けないでしょう。どんな内容にしたらいいのか、試合中盤から考え始めて、ずっと不安で」
同時に、投げ合う青柳は同じ1993年生まれの同学年。大野雄に引けを取らない熱投を繰り広げる姿に、熱くなるものを感じたという。
「8月16日に今季2敗目を喫するまで、青柳に黒星が付いたのは、あの試合だけでしたからね。すごい投球を繰り返していました。あの試合も十回裏にサヨナラ打を浴びましたが、目撃した投手戦の中でも、ベストに近い投げ合いです。僕はあの試合の公式記録をきれいなまま、部屋に保存しています」