練習試合を控え、全体練習をおこなった阪神=2021年11月2日、甲子園球場(撮影・河田一成) ■11月5日 「今」、「心」を、「一」旦、「止」める「場」-これを正念場という。先日、放送された阪神・矢野耀大監督を取り上げたNHKのドキュメンタリー番組「スポーツ×ヒューマン」はミーティングの場面から始まった。9月24日、東京ドームでの巨人戦の試合前。選手を集めて、ホワイトボードに自ら「正念場」と書いて、3文字を分解。冒頭の説明を行って、初心に戻ろうと訴えていた。
45分間の番組は矢野監督の考え方がわかる濃密な内容だった。育成と勝利を追いかけながら「メンタルを伝えていくことの方がよっぽど大事。だから監督というより先生っぽい」。的確過ぎる自己分析に妙に納得する矢野ワールドが広がっていた。
かくいう私も中学時代の国語教師にさまざまなことを教わった。憂う友達に寄りそう「優」しい人間になってください。弱音を「吐」いても最後は現状をプラスと考えれば「叶」うになる。「博」は「、」が入るが「専」はなし。専門と書くときは「テンなしクチなし」と覚えて! 将来ラブレターをもらったときに「変してます」と書いていたら交際はやめなさい! 45年も前の授業を思い出し、〝矢野先生〟からの言葉の放流を堪能した。
一時2位に7ゲーム差をつけながら歴史的V逸に沈んだ阪神は6日から、巨人とのクライマックスシリーズのファーストステージ(甲子園)に挑む。まさに正念場。夢が叶(かな)うのか。前述の国語の先生は人が夢を持つことを「儚」と書くと言っていた。文字通り儚(はかな)く散るのか。「全員が主人公」と矢野監督は言った。両リーグ最多の77勝を残したチームの存在感と底力を示してほしい。願いはそれだけだ。(稲見誠)