(セ・リーグ、ヤクルト2-10阪神、6回戦、阪神4勝2敗、30日、神宮)悔しさも、苦しさも、一球一球にすべてぶつけた。阪神・西勇が約1年ぶりに上がった1軍マウンド。2024年8月21日のヤクルト戦(京セラ)以来、617日ぶりとなる白星をつかむと、ヒーローインタビューでは本音をこぼした。
「長かったですね…」
一回を13球で片づける好発進。二回は内山、武岡に2者連続でソロ本塁打を浴びたが「ボール自体はそこまで悪くない。この年まで投げていたら、かわし方だったり心境の切り替えはできる」と、ベテランらしく崩れることはない。
テンポを取り戻し、五回2死二塁のピンチでは岩田をチェンジアップで遊直に仕留めた。三振も3つ奪い、通算1500奪三振まであと「13」。5回62球でお役御免となったが、久しぶりの舞台で役割を果たし切った。
「腐らずにいつかこの壁を越えられるだろうとお思いながら毎日過ごしていた」
昨季1軍登板は1試合のみ。「右膝内側側副靱帯(じんたい)の変性」によりプロ17年目にして初めて本格的なリハビリ組に入り、ほとんどの時間をファームで過ごした。「(疲労の)蓄積は不可抗力。ドクターからは『勲章』だと言われた」。初めて経験する野球ができない自分―。苦しさはもちろんあったが、これまで通り若手へ指導は続けた。
新人選手には自ら声をかけにいき、キャッチボールも積極的に誘った。昨季支配下契約を勝ち取り、今季は開幕1軍入りを果たした早川は「長く経験されているからこそわかる話をしてくれる。マウンドで困ったときも『あ、西さんはこう言ってたな』と思い出して落ち着ける」と頭が上がらない。「いい投球をしたときは、自分のことのように喜んでくれるんです」。早川の初勝利の際は高級ブランド「エルメス」の財布をプレゼントしたという。
「チームの一員に戻れたイメージがあるので、ここから一試合一試合、大事に投げていきたい」
久しぶりに浴びる大歓声を一身に受け止めた西勇。首位を走る虎に頼もしい男が帰ってきた。(秋葉元)