連続テレビ小説「ばけばけ」江藤安宗役・佐野史郎(C)NHK 女優、高石あかり(22)がヒロインを務めるNHK連続テレビ小説「ばけばけ」(月~土曜前8・0=土曜は振り返り)。島根県知事の江藤安宗役を演じる俳優、佐野史郎(70)が、25日までに同局のオフィシャルインタビューに応じた。
同ドラマは、松江の没落士族の娘・小泉セツと、ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)夫妻をモデルにし、フィクションで描くオリジナルストーリー。高石演じる松野トキは松江にやってきたアイルランド人英語教師、レフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)と出会い、怪談話好きだという共通点から次第に心を通わせていく。
佐野演じる江藤は、島根をこよなく愛し、島根を日本が誇る一流の県へ押し上げようと情熱を燃やす知事。これからの時代を担う若者たちには英語教育の充実が不可欠だと考え、外国人教師としてヘブンを島根に招いた人物だ。
――自身にとって今回が初めての朝ドラ出演。決まったときの感想は?
島根県松江市出身で、これまでも「だんだん」や「ゲゲゲの女房」など島根を舞台にした朝ドラは何本かありましたが声がかからなかったので、「もう朝ドラには出ないんだろうな」と思っていました(笑)。でも、今回「ばけばけ」のお話をいただき、このためにこれまで出演することがなかったんだと思いましたね。
僕は小泉八雲のひ孫の小泉凡さんの監修のもと、奥さまの祥子さんのプロデュースで小泉八雲の朗読を18年続けているのですが、昔から小泉八雲とセツのドラマをいつかやりたいという話をNHK松江局でもしていたので、今回「ばけばけ」の制作発表があった時は、みんなも喜んでいましたし、僕もお声がけいただけてうれしかったです。
島根県の発展のため知事の江藤安宗(佐野史郎)は外国人教師を招聘する(C)NHKヘブン(トミー・バストウ)を迎える江藤知事(佐野史郎、左)と錦織(吉沢亮)(C)NHK――演じる江藤安宗は、どんな役か
江藤の直接のモデルではありませんが、小泉八雲を教師として招聘(しょうへい)した籠手田安定(こてだ・やすさだ)さんは、滋賀、新潟、島根の知事を務められた立派な方で、武術の達人でもあり、質実剛健のイメージを持っていました。だから、台本で最初に江藤という役を読んだときは、えらくとぼけた人だなと(笑)。でも、島根をこよなく愛し、西洋近代文明をいち早く取り入れるところは、ちゃんと押さえられていますね。
実は当時の知事は国から遣わされていて、籠手田さんも長崎出身。出雲ことばはほとんど話さなかったと思います。ですが、松江の人間である僕が知事役を務めることもあり、ドラマでは松江出身の島根愛の強い人物像の設定となりました。地元の人に「変な出雲ことばだ」と言われるのは嫌なので、実は相当プレッシャーを感じています。
近代化を促していきたいんだけど、異国の人に思いを寄せる娘のリヨのことは心配という、混迷していた時代の中で近代化推進と伝統を重んじる価値観を同時に持つ人物だとも思います。僕にも娘がいるので心情がわからなくはないし、フィクションと現実が重なるような気持ちになったり…。小泉八雲の朗読を続けていることも含めて、「ばけばけ」というドラマを生きるだけでは収まらない、現実とフィクション、現代と明治の時代を同時に生きているような感覚でいます。
ヘブン(トミー・バストウ、左)と話す娘・リヨ(北香那、中央)を心配する江藤知事(佐野史郎)(C)NHK江藤知事(佐野史郎、左)はリヨ(北香那、中央)の様子に、ヘブン(トミー・バストウ)への恋心に気づく(C)NHK――小泉八雲を長年朗読している自身からみて、「ばけばけ」という作品の印象は?
僕は研究家ではないけれど、それなりに小泉八雲に関する書籍を読んできているので、大体の流れは把握しているつもりです。それでも、知らないような深いところを掘り下げていて、すごくしっかりして筋が通っている。もちろんフィクションだから事実と違ったりデフォルメしたりしている部分もありますが、本質から逸脱することはありません。ある程度、ヘルン(ハーンは松江の人々からヘルンさんと呼ばれていた)とセツのことを知っている人でも、このドラマを見たら、「そこまでやるんだ!」という感じは、お受けになるのではと思います。
実際のセツさんがどんな方だったのかはセツさんが記した「思ひ出の記」などから想像するしかないのですが、怪談や本を読むのが好きな、いわゆる「怪談オタク女子」的な感じがしています。もしご存命であったら、きっと仲良くなれるんじゃないかな(笑)。そんなセツをモデルにした松野トキに、高石さんのあのおおらかな感じがこのドラマにおいてピッタリだなと感じています。
ヘブンを演じるトミーさんは、よく研究なさっているなと思います。実際のヘルンさんを見たことがあるわけではありませんが、たたずまいはもちろん、その気性といいますか、決して優しいだけの男ではないこわもてなところも表現されていて、流石にロックバンド、FranKoを率いているだけのことはあるなあと敬服しています。
西田千太郎がモデルの錦織(友一)を演じる吉沢亮さんは、芝居を交わすたびに、その正直で真っすぐな姿勢に惹(ひ)き込まれてしまいます。錦織が抱える後ろめたさや引き裂かれるような思いは、実は影の主役というか、近現代の日本が抱えてきた歴史の闇を代弁しているようにも感じています。