引退会見を行った巨人の長野久義=東京都千代田区(撮影・尾崎修二) 〝長野いい人伝説〟を挙げればキリがない。会見で花束贈呈役を務めた種田トレーナーの話を聞いたときは、驚いた。
2018年、巨人の試合の始球式で東京ドームに米バスケットボールNBAのスーパースター、ステフィン・カリーが来場。長野は直筆サイン入りボールを本人におねだりして、もらったという。シーズンオフは米国で現地観戦するほどのNBA好きにとって、超お宝を手にした喜びは半端ではなかったに違いない。
それでも後日、種田トレーナーの息子がカリーに憧れるバスケ少年だと聞くと、「頑張ってねと伝えてください」と迷いなく種田家にプレゼントした。長野の若手時代から支えてきた種田トレーナーが「あんなに礼儀正しい人には出会ったことがない。いつも自分より誰かのためを考えている」と話すように、人が喜ぶ顔を見るのが一番好きなのだと思う。周囲からはそのようなエピソードをたくさん聞いた。
後輩選手やスタッフ、報道陣を誘った食事の席では、いつも下座につく。お皿やグラスをさりげなく配り、自分語りはせず、全員に話題を振る。率先してボケて笑わせながら、いつの間にか会計を済ませていた。最後は「急に誘ったのにありがとう」と感謝しながら帰っていく。自分もあんな人間になれたらな、といつも感じていた。でも、あんなスマートな振る舞いが似合うのは長野さんだけだな、とも思う。(2015年から巨人担当、現キャップ・谷川直之)