■9月21日 リーグ優勝後に1軍に呼ばれた。スタメンにも起用された。一塁へのヘッドスライディングで今季初安打を記録した。ファンは自分のことのように喜んだ。しかし、シーズン残り9試合で再調整を命じられた。そんな男が阪神にいる。プロ16年目で33歳の原口文仁だ。
右の代打の切り札として開幕メンバーに入ったものの、4月13日に降格した。1軍滞在18日間が〝今季最長〟になるとは思わなかった。8月に3度目の昇格を果たすも、出場機会がないまま、また抹消。ノーヒットで迎えた今回は〝4度目の正直〟だった。
13日の巨人戦(東京D)では投手強襲の同点内野安打。頭から一塁ベースに向かった。チーム130試合目、自身13打席目のHランプにメンバーも観客も拍手を送った。それでも負の流れは断ち切れず、最終戦を前に姿を消した。その意味を考え、わが身に置き換えると…。
帝京高から2010年ドラフト6位で入団。腰の故障で育成選手となり、16年に支配下復帰を果たすと、一気にブレークし球宴に出場した。18年には球団最多タイの代打23安打を記録。19年に大腸がんを公表するも復活。起伏に富んだ球歴を歩んだ。だからプレーに人柄がにじみ出る。人間力にあふれている。親近感を覚える数少ない一人だからこそ、4度の降格はひとごととは思えない。
プロ野球にも四季があり、喜怒哀楽がある。ただ、その年の覇者が決まり、出会いと別れに直面する秋は特別な感情に包まれる。今年も10月23日にドラフト会議が開催される。構想外選手も次々と現れる。原口は昨年、FA宣言後に単年契約を締結。このままでは終われない。もったいない。どうか〝秋風〟とは無縁であってほしい。(稲見誠)