これは異例のことといえる。天王山となった巨人-広島の3連戦。3連勝した巨人は、すべて違う捕手がマスクを被っている。初戦は菅野智之投手と小林誠司捕手のコンビで、2戦目はフォスター・グリフィン投手と岸田行倫捕手が組み、3戦目は戸郷翔征投手に大城卓三捕手を組ませた。
「優勝するためにはまず正捕手を固定すること」と言われるように、正捕手の存在はペナントを左右すると言っても過言ではない。過去の優勝チームでも、正捕手がどっしり8割から9割、マスクを被っているのが主流。2番手捕手がサポートすることはあっても、あくまで主戦は2人まで。3人の捕手を併用して優勝したチームは記憶にない。
巨人が捕手3人体制を確立する過程で問題だったのが、大城の処遇だった。大城は開幕マスクを被ったが、リードを含めて捕手としての立ち居振る舞いに課題が見え、肝心の打撃も不振にあえいで2軍落ちも経験した。その中で菅野の復活とともに、〝スガコバコンビ〟は外せない存在となり、岸田は正捕手のポジションを伺う勢いを見せた。
今季の巨人の快進撃の背景には、捕手出身の阿部慎之助監督の捕手目線による選手起用がある。
阿部監督はまず大城を一塁で復活させて、そこから徐々に捕手での再生を図った。大城は「一塁を守ったことで、キャッチャーとして見えてきた部分があった」と語り、村田善則総合コーチは「いろいろな経験をして捕手としての幅は確実に広がっているし、リード面でも成長を感じる」と語る。
主戦が1人でマスクを被るメリットはある。ただ後半戦に入ってからの巨人の強みは、3人の捕手がコンビを組む投手ごとに次々とマスクを被ることだ。
「配球を読むために捕手のリードの傾向を研究する」と語っていたのはアレックス・ラミレス元DeNA監督だったが、捕手がコロコロ変わることで配球の傾向も日々変化する。捕手出身監督ならではの3人の活用が、今は巨人の武器であり、それが広島戦の3連勝につながった。後半戦の巨人の強さの一因を見た気がする。(スポーツジャーナリスト)
■鷲田康(わしだ・やすし) 1957(昭和32)年生まれ。埼玉県出身。慶大から81年に報知新聞社入社。巨人キャップとして長嶋監督誕生、松井秀喜入団などを取材。2003年にフリーとなりプロ野球、米大リーグなどの取材、執筆を行う。著書に『10・8 巨人vs.中日 史上最高の決戦』『長嶋茂雄 最後の日。1974.10.14』(いずれも文藝春秋)などがある。