袴田巌さんの第2次再審請求の差し戻し審で、再審を認める決定を伝える関係者(中央)=13日午後2時2分、東京高裁前 ■3月16日 若い世代は信じられないかもしれないが、1960年代はテレビのボクシング中継がすべての曜日であった。ファイティング原田、海老原博幸、青木勝利のフライ級三羽がらすが空前のブームに火をつけフライ、バンタム2階級を制した原田の世界戦は視聴率60%台をたたき出した。半面ボクサー崩れのよくないイメージは根強く残っていた。
袴田巌さん(87)はそんな時代にフェザー級で最高ランク日本6位だったボクサー。メインイベントの10回戦も2試合ありテレビ中継もされたはずだ。引退後の66年に静岡県の一家4人が殺害された事件で死刑が確定し、第2次再審請求の差し戻し審で再審開始が認められた。
長年にわたり袴田さんを支えてきたボクシング関係者にとっては待ちに待った決定でもあった。その1人で元WBA世界Sバンタム級王者の飯田覚士さんは「調べれば調べるほどおかしなことばかり。ボクサー崩れだからと犯行をなすりつけた感じで当時の偏見に腹立たしさを感じていた」。
東京地裁も確定判決の決め手となった「犯行着衣」は捜査機関の捏造(ねつぞう)の可能性が極めて高いとし「到底袴田さんを犯人と認定できない」と結論付けた。凶器とされたくり小刀も4人殺傷したわりには歯こぼれもないという。「ボクサーは人殺しなどしないし、拳があればそんなものは手にしない」とは元世界王者の〝炎の男〟輪島功一さんの言葉だ。
今後、検察側が決定を不服として特別抗告すれば審理の舞台は最高裁に移ることになる。「人一人の人生を何と思っているのか。検察はもう引き延ばしはやめ『間違っていた』の一言を聞きたい」と飯田さん。一刻も早い再審の実現を期待したい。(今村忠)