「伊東監督は明るかった…」と上田はいう。だがその明るさが逆に上田の胸にしみる。それをおくびにもだせない指揮官の心理のヒダは阪神というチームの「監督の懊悩(おうのう)」を何度もみてきた上田にとってはわかる。
四回、能見から先頭の大嶺翔が左中間に二塁打。ポッチリと灯がともる。2番荻野が能見の外角球を強引に引っ張り、走者すら進められない打撃(遊ゴロ)をみてスパッと次の回から伊東監督はサントスに切り替えた。しかし七回に初打席が回って…あのWBCで見せたキューバの忍者打法(走りながらヒットを打つ男)はクールな能見にはまるで通用しない。三振。
それを思うと金本知憲は子供たちがここ連日、学校から「よくできました」というテストを嬉々として持って帰ってくるような母の手応えを感じている監督だ。キャップ阿部祐亮はいうのだ。「試合前の練習中も俊介選手をつかまえて監督は『おい盆と正月が一度にきたナ』と声をかけていました。そして『今日は誕生日とXマスやぞ…』とニヤリ。監督はこう続けてましたョ。『そのあとはゴールデンウイークか!』ですって…」。