リーグ優勝を決めた7日の広島戦でウイニングボールを捕球した阪神・近本光司 史上最速優勝を成し遂げた今季の阪神の舞台裏を探る連載「球児トラ界隈」。第13回は不動のリードオフマン・近本光司外野手(30)が登場。連続試合出場ストップや自己ワーストの38打席連続無安打を〝近本節〟で振り返った。
30歳で臨んだシーズンは節目の記録もあった。試合に出ないとき、打てない時期もあった。近本にとって、2025年はまさに紆余(うよ)曲折の一年となった。
「今年は苦しい時期とかそういうのはなくて。調子は常に普通か、ちょっと、いいかだけだったかな」
2年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献し、6月7日のオリックス戦(甲子園)では通算1000安打を達成。861試合目での到達は球団日本人最速の快挙だった。
駆け抜けたセ界の頂点までの道のり。その道中で休息を与えられることもあった。8月19日の中日戦(京セラ)を欠場。連続試合出場は「180」でストップした。これからも続いていくプロ野球人生を見据え、休養の意味合いが込められた欠場。ただ、それを真正面からではなく、少し違う角度で見る近本の受け取り方も面白い。
「人間って本当ね、どんどん『楽に、楽に』って思うじゃないですか。僕もそう。一回休むと、気になるじゃないですか。一回休んだっていうことが」
連続出場をしていたときとは違う葛藤。「一回でも休んでしまったら、ちょっと休みたいなっていう気持ちも出てくる。そこでやらないといけないっていう気持ちも出てくる。その中で葛藤するしんどさもある」。ここまで自分の気持ちを整理し、分析するから「いい経験になりました」と振り返ることができた。
自己ワーストとなった8月下旬の「38打席連続無安打」もそう。「しゃーないやろと。開き直っている訳じゃなくて、考えたとしても変わらない。もしかしたらヒット打ちたい、打ちたいと考えていたら出ていたかもしれないけど、僕はそうじゃないと思っている」。今までで一番長いトンネルに入ったからこそ、見える世界がある。そこでしかできない経験がある。だから「次につなげられるように感じたことを記録しながら、いい経験ができている」と話すことができた。
9月7日、広島戦(甲子園)。リーグ優勝のウイニングボールは、近本の守るセンターへと飛んできた。歓喜の輪が解かれ、ベンチへと戻ってきたリードオフマンは少し興奮気味だった。
「野球人生の中ですごく意味のある一年になるのかな。これが野球人生の分岐点になるかもな、と。すごくいい一年でした」
肌で感じ、記録し続けた経験が近本をまた強くする。縦じまの背番号5はこれからも虎の黄金時代の象徴であり続ける。(原田遼太郎)