接戦をもぎ取るために重要になるのが、試合の終盤に出場して仕事をする、控え選手の存在だ。現在セ・リーグ首位を走る阪神には、昨年までベンチにいなかった若虎が加わっている。ときにはスタメンで。そして、代打、代走、守備固め、そのすべてで役割を果たす高寺望夢内野手(22)。27日のヤクルト戦(神宮)では難しい打球を抑えきれずにサヨナラの適時失策を犯してしまったが、翌日には前を向いて、黙々とノックを受ける背番号67の姿があった。今の立ち位置で重要にしていることを聞いたことがあった。
「ベンチではひたすら試合を見ています。ゲームの展開を見たり、自分が打席に立ったら、と考えたり。そうじゃないと(急に)出たときに入りきれない。だから体の準備も大切ですけど、しっかり見るようにしています」
スタメンでもベンチスタートでも関係なく〝試合に入り込む〟ことの重要性を語った。今季19試合に出場している高寺。その内訳は、先発6試合、代走4試合、代打6試合、守備からが3試合だ(すべて27日まで)。偏りがない起用なだけに、どれかに特化して準備することはできない。だからこそ、先発でも先発でなくても、出場しているつもりで試合に入り込む。そして「試合開始で気持ちは入っているんですけど、出て、さらに入れる。高校のときから、準備しているときのほうが緊張するんですけど、出たら意外と大丈夫だったりします」と、覚悟を決めて試合に飛び込んでいく。
プロ初本塁打を放った場面でも、一発勝負に勝つことができる力を感じられた。今季初スタメンとなった5月13日DeNA戦(ハードオフ新潟)。0―1の2死から、自身がアウトになればゲームセットという状況で放った値千金の一発だった。
ただ、初めからそれだけ割り切って試合に臨んでいたわけではないという。「気にしていたら気持ちの波ができてしまう。最初はその切り替えができなくて。三球三振なんかしたら、もう立ち直れないくらいその日は落ち込んでいました。でも、最初よりはできるようになっているかなと思います」。その〝切り替え力〟をさらに感じたのが、6月22日のソフトバンク戦(甲子園)だ。
守備から試合に入った高寺は、無死一塁から1球バントを試みるもファウル。しかし、ここからバスターに変更して見事に右前打とし、チャンスを拡大してみせた。実はこの1週間前。15日の楽天戦(楽天モバイルパーク)では無死一、二塁からバントを成功させられずにフライアウトに倒れ、走者を進められず、チームも敗戦してしまっていた。
もう一度、悪いイメージがよぎることはなかったのだろうか。率直に尋ねると、「切り替えられているかどうかはわからないですけど、気にしないようにしています。打てなくてもすぐに次の出番は来るので、考えているヒマがない。落ち込んでいる余裕はないっていうのが正しいかなと思います」と教えてくれた。
次のチャンスに目を向ける。この術を身に着けたからこそ、一発勝負の世界の中で結果を残し続けることができるのだろう。(中屋友那)