一球一球に魂を込め、投げられる喜びをかみ締めながらマウンドに立つ。プロ4年目を迎えた阪神・伊藤稜投手(25)が勝負の一年に挑んでいる。
「去年や一昨年のことを考えたら、こうして、いっぱい投げられている姿は想像できなかった。毎日が本当に楽しいです」
中京大時代は、最速150キロ左腕として注目された。2022年に育成ドラフト1位で入団するも、1年目で大学3年時に痛めた左肩の故障が再発。同年オフに手術を受け、マウンドからは遠ざかった。長いリハビリを経て、2024年7月7日に対外試合デビューを果たした。今春の沖縄キャンプでは宜野座組、具志川組の合同紅白戦で自己最速154キロを計測。1回を無失点に抑え、藤川球児監督(44)から「輝いた選手、光って見えた」と高評価を受けた。
「ボールの強さ自体は大学よりいいかな」
確かな手応えのもと、自信を持って腕を振っている。今季はウエスタン・リーグ6試合に登板して2勝3敗、防御率3・34。4月29日のソフトバンク戦(筑後)では6回1失点と好投した。2軍の先発ローテとして開幕から投げ続け、支配下登録に向けてアピールを重ねている。その裏には、恵まれた環境の中での、先輩投手からの学びがあった。
「1軍で活躍されている人が身近にいて、行動や考え方を肌で感じられるのは貴重な時間ですね」
通算124勝の西勇輝投手(34)、同じ左腕として2度の2桁勝利を挙げた大竹耕太郎投手(29)、伊藤将司投手(28)らが、今季は開幕から2軍調整。普段は1軍で主力として活躍する先輩の、技術と姿勢を貪欲に学び、自らの糧としている。
「(先輩には)経験の中で確立されたものがある。自分も探していかないと。そういうものがあれば、自分がぶれたときに立ちもどれると思う」
育成4年目。まだ実績のない伊藤稜にとって、もっと強く感じているのは〝危機感〟だ。左肩の傷も癒え、ようやく本格的な競争の舞台に立てている。遅れてやってきた左腕が、狭き支配下の枠を狙い、牙を研いでいる。(萩原翔)
■伊藤 稜(いとう・りょう) 1999(平成11)年11月8日生まれ、24歳。愛知県出身。豊明小1年から軟式チームで野球を始め、栄中時代は硬式の東海ボーイズでプレー。中京大中京高では控え投手で、3年夏に甲子園出場も1回戦で敗れる。変則気味のスリークオーターで中京大では最速150キロ左腕として注目を集めた。22年育成D1位で阪神に入団。178センチ、85キロ。左投げ左打ち。年俸300万円(推定)。背番号「125」