筒香に3ランを浴びた松本裕。石川氏はファーストストライクの難しさと怖さを指摘した(撮影・渋井君夫) 今季限りで現役を引退した前ヤクルトの石川雅規氏(46)が、DeNAとソフトバンクによる「SMBC日本シリーズ2026」全試合で、観戦評論をサンケイスポーツに特別寄稿する。ソフトバンクが2連勝を決めた第2戦は「ファーストストライクの難しさと怖さ」について分析し、短期決戦における「切り替えの重要性」を説いた。
◇
(SMBC日本シリーズ2026、DeNA3-4ソフトバンク=延長十回、第2戦、ソフトバンク2勝、25日、横浜)ファーストストライクの難しさと怖さを実感したゲームだった。ソフトバンクの先発、モイネロ投手は立ち上がりから積極的にストライクゾーンで勝負した。ファウル、結果球になった球も含めて打者27人中19人に1球目にストライクを投げており、1球目のストライク率は70%を超えている。引き締まった試合になったのは、モイネロ投手のストライク先行の投球があったからだ。
試合を大きく動かしたのもファーストストライクだった。八回裏のDeNAの攻撃。1死一、二塁から筒香選手が松本裕投手の1球目の外角直球を左翼席への3ランとした。ファーストストライクの打率が高く、第1戦で放った2安打も1球目を捉えたもの。狙い澄ました一振りだった。
ソフトバンク・モイネロ =横浜スタジアム(撮影・長尾みなみ)ソフトバンクバッテリーとしては、もう少し丁寧に入りたかった。第1戦の2安打も外角寄りの速球だったので、今の打撃の状態には合っているコースと球種だということ。筒香選手は八回の4人目の打者だったが、前の3人に対する1球目の入りはいずれも変化球。つながりを考えても、直球が来るタイミングと読まれたのかもしれない。
「入り」はとても難しい。私も現役時代に「入り」はとても大事にしていた。試合の序盤と中盤で状況も違うが、八回の場面でボールから入った方がよかったのか? と問われると、答えは難しい。神経をすり減らす場面なだけに表裏一体の駆け引きの中で、筒香選手に軍配が上がったと言わざるを得ない。
試合を通じて短期決戦における「切り替えの大切さ」も痛感した。五回表。ソフトバンクの先頭・正木選手が放った飛球を、DeNAの左翼手、度会選手が落球して無死三塁となった。失点につながっていれば、もう少し早く勝敗が決まっていた可能性もある。野球は一人でやっているわけではなく、誰かのミスを誰かがカバーして成り立つ。あのイニングを無失点で乗り切ったことで、一時逆転の攻撃にもつながった。
八回裏の先頭で出塁したのが度会選手だった。日本シリーズ初安打となる右前打。一本出れば乗っていくタイプだし、ミスをした試合で得点につながる安打を放っただけに次戦以降も期待できる。短期決戦では好不調や前日のプレーを引きずってはいけない。勝っても負けても、また新たな気持ちと考えで臨むことが日本シリーズの鉄則。1つのエラー、四球が勝敗を大きく左右するからこそ、失点につながるミスをした選手も引きずらないことだ。
ソフトバンク・松本裕投手も2試合連続で本塁打を浴びているが、彼の力がなければリーグ優勝はできなかった。チームにとってはなくてはならない存在。移動日を挟んだ第3戦以降、まだまだ大事な場面を託されると思うので、新たな気持ちで臨んでほしい。(前東京ヤクルトスワローズ投手)