Mリーグ公式解説に加わった前田直哉 ©AbemaTV, Inc. ©M.League 麻雀のプロスポーツ化を目的として2018年にスタートしたMリーグ。多くの感動をもたらしてくれた2025-26シーズンは、サプライズも満載だった。競馬評論家で麻雀ウオッチャーの片山真氏が取り上げる驚きのシーンとは。
【役満をアガっても…】
開幕日から役満が飛び出した ©AbemaTV, Inc. ©M.League今シーズンは計6回の役満が飛び出した。9月15日の開幕日第2試合で仲林圭(U―NEXT Pirates)が四暗刻をアガったのを皮切りに、9月26日=白鳥翔(渋谷ABEMAS)四暗刻、10月31日=浅井堂岐(セガサミーフェニックス)四暗刻と、1カ月半で3回のハイペース。
その後はやや鳴りを潜めたが、年明け2月6日に堀慎吾(KADOKAWAサクラナイツ)がMリーグ史上初めての小四喜を成就させた。
セミファイナルも後半に入った4月23日、下石戟(BEAST Ⅹ)が大三元をアガれば、30日には滝沢和典(KONAMI麻雀格闘俱楽部)が東場の親番で四暗刻ツモの16000オール。麻雀の華でもある役満成就にファンは酔いしれた。
しかし、だ。この6回の役満を決めた選手のうち、白鳥、堂岐、堀、下石の4人は2着に終わっている。その試合を一撃で決めてしまうような高打点の役満も、Mリーグルールのもとではセーフティーリードにはならない。魔境の怖さをまざまざと見せつけられた。
<4月23日・第1試合>
東1局、起家の下石戟が内川幸太郎(EX風林火山)から大三元をアガって大きなリードを築く。それでも東4局の親番で渡辺太(赤坂ドリブンズ)が、一瞬でそれを打ち砕いてみせた。
この点差を一瞬で逆転した ©AbemaTV, Inc. ©M.League「混一色・ツモ・ダブ東・一盃口・ドラ3・赤1」は11翻で親の三倍満。1万2000オールでアッという間にトップに立ったのだ。Mリーグに安全圏など決してない-。そんな舞台に僕らはこれからもシビれっぱなしなのだろう。
【11枚山の流局】
<1月30日・第1試合>
怖い、といえば、この局も怖すぎた。サクラナイツの堀慎吾が4巡目の速さで芸術的なテンパイにたどりついた、東3局3本場だ。
ぜいたくな六面張リーチ ©AbemaTV, Inc. ©M.League八筒を雀頭とみれば「三-六-九筒」待ち、暗刻とみれば「一-四-七筒」待ちの六面張。他から出ても見逃して、「リーチ・ツモ・平和・一気通貫・赤」の跳満になる大アタリの「九筒」ツモを終盤まで期待していいぜいたくな待ちだ。しかも、直後に表示されたツモ山にある残り枚数は「11」。こんな数字、見たことないぞ。
山に11枚眠る待ち牌へ手を伸ばしたが… ©AbemaTV, Inc. ©M.Leagueなのに、これが出ないどころか、全くツモれない。アガリ牌がすべてほかに流れたわけでもない。見えない王牌13枚の中に、なんと5枚も欲しい牌が埋もれていたのだ。あまりに残酷な結末。今季不振を極めた堀慎吾、レギュラーシーズン敗退のサクラナイツを象徴するようなつらい一局だった。
【前田直哉プロの解説】
今シーズンのサプライズ、というか、自分的には最大の収穫だったのが、前田直哉(日本プロ麻雀連盟)という新解説者に出会えたことだ。
<10月3日>
Mリーグ公式戦、初めての解説は実況・古橋崇志とのコンビ。
今季誕生した名コンビ。左から前田直哉、古橋崇志 ©AbemaTV, Inc. ©M.LeagueⅩでは「口から先に産まれたような人」と自己紹介する前田のキャラを、同じ競技団体に所属する古橋も十分にわかっているからだろう。番組の冒頭、前田が口を開いた瞬間から、ニヤけが止まらなくなっていた。
いざ対局が始まると、その期待に違わない、軽快で楽しいトークが続く。切り口がひと味違うし、選手のこともよく知っているから引き出しが多い。
そしてもちろん、一番のポイントは解説がわかりやすいことだ。選択がある場面では選手の思考をしっかりと伝えてくれるし、言われて初めて気がつくような細かいところまで拾ってくる。
2015年には鳳凰位、最高位の2冠に輝いた雀力があるのだから当然といえば当然なのだが、見ているファンに難しい局面をわかりやすく言語化して伝える能力が秀でている。
今年もMトーナメント出場が決まった前田 ©AbemaTV, Inc. ©M.Leagueこれぞ、口から生まれてきた人のストロングポイント。楽しい解説は何度でも見たいし、選手として黙って対局するときの打ち回しももっと見てみたい。
【三河の猛将の宿題】
誰もがそろって今年最大のサプライズとして挙げるのは、風林火山に新加入した永井孝典の大暴れだろう。
力強いリーチ攻勢で席巻した永井孝典 ©AbemaTV, Inc. ©M.League所属する最高位戦日本プロ麻雀協会ではC3リーグ。無名ともいえる選手が風林火山の指名選手オーディションで優勝し、Mリーガーの座をもぎ取ってきたのだ。
『三河の猛将』のキャッチフレーズで合戦場に飛び込んできた〝新人〟武将は、リーチ、リーチでとにかく攻めた。一時は30%を超えるリーチ率で先輩Mリーガーを圧倒。25年内に2桁勝利を挙げるリーグ記録を打ち立てた。
最終的にレギュラーシーズンは「個人スコア」「最多トップ」「4着回避率」の3部門で2位。無冠とはなったものの、「MIP」(Most Impressive Player)を選ぶなら、もちろん彼しかいなかった。
ただし、来シーズンに向けての宿題も。大きなプレッシャーのかかるファイナルに入ると前半の2試合で連続ラスを引き、後半戦は出番が回ってこなかった。
ひたすら応援する立場になった猛将には、間違いなく内に秘めた熱いものがある。来シーズンこそは信頼される選手として大一番での登板を。まだまだ大きな伸びしろを期待していい。
ファイナルでは応援に回った永井(右) ©Mリーグ■Mリーグ
麻雀のプロスポーツ化を目的として2018年にスタートした競技麻雀のチーム対抗戦。1チームは男女混成の4人で構成され、ユニホーム姿で対局する。2025―26シーズンは全10チームで争われ、EX風林火山が5季ぶり2度目の優勝を飾った。
■片山真(かたやま・まこと) 1961年12月18日生まれ。64歳。広島県出身。東京大学農学部畜産獣医学科卒、同大学院修士課程修了。競馬記者歴は40年。夕刊フジで『俺の切り札』を連載し、メインレースを中心にヒットを連発した。麻雀歴は高校1年からで、昭和の人間らしく好きな手役は純チャン三色。