突き進む先に人、人、人―。高知市内で11月10日に行われた「高知県阪神タイガース優勝記念パレード」は、猛虎戦士の晴れ姿をひと目見ようと沿道に1万3000人(速報値)もの観衆が詰めかけ、大にぎわいだった。
高知でのパレードを終えフォトセッションに臨む阪神・石井大智、嶋村麟士朗、中西清起、中川勇斗、門別啓人、前川右京、工藤泰成、早川太貴、高寺望夢、江本孟紀、藤川球児監督、ラファエル・ドリス藤川監督を筆頭に、石井やドリス、前川ら9選手も乗り込んだ2階建てバスは帯屋町壱番街商店街を約30分かけて進んだ。そのバスで声援を浴びていた一人が高知商高出身で、昨季までは四国IL高知でもプレーした育成ルーキーの嶋村麟士朗捕手(22)だ。
「びっくりするほど人がいたので、そこに驚きました。知り合いとかも来てくれていたので、『おお!』みたいな感じで手を振ったり、小学校のときの先生も来てくれていて、『先生~!』みたいに手を振ったり。楽しかったですよ」
地元でのパレードとあって、懐かしい顔もよく目に入った。自らに向けた声援もしっかりと耳に届いた。うれしい瞬間だった。ただ、祝福を受け続ける30分を終え、嶋村には湧き上がる思いがあった。
「少しでもチームに貢献をして、あのパレードをしたいですよね。そのためにも支配下にならないといけない―ということを考えていました」
自身はまだ育成選手。ともにパレードに参加したほかの8選手が今季に一度は経験した1軍の舞台に立つためには、まず乗り越えなければならない壁がある。パレード後に藤川監督が明かしていたのは「(石井、ドリスも含めて)独立リーグで磨いて、という経験値がすごく大きな縁となって、財産となって、恩返しにつながる。だからすごくたくさんの経験をしてほしいな、と思って今日、彼らにも乗ってもらって」という人選の意図。嶋村にとっては意義のある時間であり、決意を新たにする530メートルの道のりだった。
今春のキャンプでは左足のコンディション不良により満足に練習ができなかったため、安芸での秋季キャンプが「初キャンプぐらいの感じです」と意気込んでいた。鍛錬を通して多くを学び、アピールも実って来春は宜野座キャンプでスタートすることも決まった。そして、見すえるのは、その先だ。
「戦力になりたいし、こうやって高知でパレードが開催されるぐらいなので、ならなきゃいけない。自分も高知出身だし、自分が活躍したらもっと来てくれるんじゃないかな、と思うので、頑張ります」
開催を願う次回の高知パレードには、甲子園で暴れまわった男として乗り込む。そこから見える景色はきっと、今年以上の絶景として上書きされる。(須藤佳裕)
■嶋村 麟士朗(しまむら・りんしろう) 2003(平成15年)年7月13日生まれ、22歳。高知市出身。高知商高を卒業をしたのち福井工大を中退し、22年に四国IL高知に入団。捕手とDHで23年から2年連続ベストナインに輝き、24年はリーグ3位の打率・350をマークした。25年育成D2位で阪神入団。今季ウエスタン・リーグで58試合に出場して打率・266、1本塁打、22打点。177センチ、90キロ。右投げ左打ち。来季推定年俸300万円。背番号「128」