12回判定負けで担架で運ばれる重岡銀次朗=5月24日、インテックス大阪 5月24日にインテックス大阪で行われたIBF世界ミニマム級タイトルマッチ。前王者の重岡銀次朗(25)=ワタナベ=が、初防衛を目指していた王者のペドロ・タドゥラン(28)=フィリピン=に1-2の12回判定で惜敗した。ダイレクトリマッチで返り討ちに遭い王座返り咲きを逃したが、激闘の代償はあまりにも大きかった。
試合後に意識を失って大阪市内の病院に救急搬送され、急性右硬膜下血腫のため開頭手術を受けた。手術は成功したが現在も経過観察中で、麻酔を抜いても意識は戻っていない。
私が銀次朗と最後に会話したのは、試合当日の午前8時過ぎ。IBFは世界主要4団体で唯一、前日計量に加えて当日計量も実施しており、午前8時から大阪市内で行われた計量を一発クリアした直後に、報道陣の取材に約4分間快く応じてくれたときだ。当日計量のリミットは、前日計量のリミットから10ポンド(約4・54キロ)増のため、「けっこうギリギリでした。もっと食いたいものいっぱいあったっすけど。スイーツとか食いたかったっすけど」と前日計量をパスしても、当日計量に備えて食べたいものを我慢したと明かした。
勝利してから試合後に「大阪の名物を全部食いたいですね」と笑顔で話した。日本ボクシングコミッション(JBC)は開頭手術を受けた選手の試合を許可しておらず、回復しても現役を続けることはあり得ないだろう。まだまだリングで闘っている姿を見たかったのは本音だが、そんなことはもはやどうでもいい。意識回復を祈り、大阪の名物をおなかいっぱい食べられるように回復することを願うばかりだ。
兄弟で同日に世界王者となった重岡優大(右)と重岡銀次朗兄のWBC世界同級前王者の重岡優大(28)=ワタナベ=は、試合で銀次朗のサポートをするために大阪入りして以来、大阪に残り続け、毎日のように弟が入院している病院に通い続けているという。所属ジムやJBC関係者に銀次朗の容体を説明することもあるといい、JBC関係者は「気丈にもJBCの聞き取りにもきちんと応じてくれている。立派な態度ですよ」と感心していた。時折、自身のインスタグラムのストーリーズ機能(投稿後24時間で自動的に削除される一時的な情報発信ツール)で知人やファンが「安心できるように」と銀次朗の容体を報告している。
優大は5月23日に大阪市内で私の取材に応じてくれた際には「ライトフライ級で無双します」と階級を1つ上げ、同級で再起することを笑顔で明かしていた。3月30日に愛知県国際展示場でWBC世界ミニマム級王者のメルビン・ジェルサエム(31)=フィリピン=と再戦し、0-3の12回判定で完敗。約1年前に判定負けして王座を奪われた相手に返り討ちに遭った。
再び大きな挫折を味わい、大きな決意を持って練習を再開した直後だった。「誰が強いですか?」と私にライトフライ級の強豪について逆質問し、新たな階級での強敵との対戦を心待ちにしていただけに、気の毒でならない。今は練習どころではなく、このままリングから離れてもおかしくないほどのショックを受けたことは容易に想像できる。仲の良い兄のためにも銀次朗が回復し、また兄の試合のセコンドにつくところを見られることを切に願う。(尾﨑陽介)