【陸上 駒大・篠原、山川インタビュー】駒大・山川拓馬=東京・世田谷区の駒大陸上競技部道環寮(撮影・田村亮介)
ギャラリーページで見る駒大は昨年10月の出雲駅伝と同11月の全日本大学駅伝で2位となり、今年1月の箱根駅伝は復路新記録で復路優勝して総合2位で終えた。新主将に就任した山川拓馬(3年)が13日までに東京・世田谷区の道環寮でサンケイスポーツの単独インタビューに応じ、これまでの大学生活と新年度の抱負を語った。前編、後編、番外編の3回にわたって配信する。前編では大学3年までの競技生活を振り返った。(取材構成・川並温美)
マラソン志して長野から駒大へ…1年目から大活躍
柔和な笑顔を浮かべながらも、瞳の奥には闘志が燃える。大学1年時から駅伝で活躍してきた山川が新主将に就任。藤色の常勝軍団を託された。
「去年からも上級生として下の学年を見てきたはずだけど、主将になるとそれ以上にチーム全体を見ないといけない。みんなを前向きにできるような主将になりたい」
1月4日に山川をトップにした新体制が発足。屋外5000メートルとハーフマラソンで日本学生記録を持つ前主将、篠原倖太朗(4年)から思いを引き継いだ。
長野県南部、箕輪町出身の21歳。中央アルプスと南アルプスに挟まれた自然豊かな環境で育った。自宅は標高800メートル付近で、幼いころから坂道を駆け抜けた。中学から陸上を始め、全国都道府県対抗男子駅伝で活躍するなどすぐに頭角を現した。自主性を重視して地元の公立、上伊那農業高へ。将来のマラソン挑戦を見据えて駒大に進んだ。
「中学の時からマラソンをやると決めていた。実業団でマラソンをやると考えたときに成長できると感じたのが駒大だった」と山川。当時監督だった大八木弘明総監督からも「本気でやるぞ」と声をかけられ、ハートに火が付いた。
駒大でも1年から結果を出した。10月の出雲駅伝で堂々のメンバー入り。11月の全日本大学駅伝では4区区間賞で衝撃のデビューを果たした。「緊張した部分はあったが、大八木総監督(当時監督)に言われた通りラスト3キロで切り替えることができた」と山川。チームも出雲から2連勝で史上5校目の大学三大駅伝3冠に王手をかけた。
2023年1月2日。念願の箱根5区(20・8キロ)を勝ち取った。高低差800メートル以上を一気に駆け上がる難コースを前に気合が入った。4区終了時点では2位の青学大に1秒差、3位の中大に39秒差。山育ちの山川は区間4位の走りで中大の猛追を交わし、往路優勝のゴールテープを切った。「全日本で結果を出していたので箱根もこの調子でいけると思ったが甘くなかった。山の辛さ、難しさを実感した」と反省は尽きないが、チームは無事に3冠を達成した。
大2春ヘルニアから負の連鎖…箱根4区で故障悪化
順調に見えた大学生活だったが大学2年から暗雲が垂れ込める。大学1年3月に椎間板ヘルニアを発症。5月の関東学生対校選手権(関東インカレ)男子2部ハーフマラソンで2位に入ったが、「早く復帰できた分、違うところが痛くなってきた。ヘルニアが治ってやったー!と思って練習の強度をあげたら、今度はバランスが崩れてきてしまった」と歯車が狂っていった。この身体のバランスの乱れは駅伝シーズンにも響いていく。
身体に不安はあったものの、ロードの勝負強さはチーム随一だ。史上初の2年連続大学三大駅伝3冠を目指す大学2年目はエース候補として白羽の矢が立った。就任1年目の藤田敦史監督は山川を出雲の3区(8・5キロ)に配置。山川は「今まで田沢(廉)さん(現・トヨタ自動車)などエース級の人たちが走ってきた区間なのですごくプレッシャーを感じた」といいつつも、区間2位の好走で期待に応えた。
続く全日本は最長区間の最終8区(19・7キロ)に抜てきされ、伊勢路では2年連続区間賞の活躍。しかし、レース中に異変が起こった。「走っている途中に違和感があった。終わって調べてみたら腸骨筋が軽い肉離れの状態だった」。左の恥骨も痛めていた。
様子を見つつ、迎えた2度目の箱根駅伝。4区(20・9キロ)を走っている最中に恥骨の故障が悪化し、青学大との差は4秒から1分26秒まで開いた。「痛いのを我慢しながら、だましだましでやってきたつけが回ってきた」と山川。総合2位で史上初の2年連続3冠を逃し、悔し涙を流した。大学入学以降、初めて駅伝で負けた。
度重なる故障で身体も悲鳴を上げていた。骨盤が傾いて脚の左右差が拡大し、走りにも支障が出てきた。大学3年からはフィジカルトレーニングに力を入れて身体のバランスを修正し、6月にはレースに復帰。徐々に故障が減っていき、手応えを得て秋を迎えた。
大学三大駅伝で初めて追い抜かれた2度目の5区
出雲は2年連続で3区区間2位。2年連続となった全日本8区では青学大との2分37秒差をひっくり返して区間賞を獲得した。青学大と同時にスタートして優勝した国学院大も28秒差まで追い詰めたものの「前が見える状態でのゴールだったのでそこが悔しくてしようがない。これまでのエースの人たちだったら絶対勝っていた」と今でも悔しさを隠せない。圧倒的な区間賞でも満足しないのが山川だ。
リベンジがかかる3度目の箱根路は、エースとしての期待を背負った。大会2週間前までは2区の準備をしつつも、最終的には1年時以来2度目の山上りを託された。4区終了時点で首位の中大とは2分17秒差、2位の青学大とは1分32秒差。雪辱を果たす絶好の機会だ。
いつもの山川ではなかった。腕がつった影響もあり、動きがぎこちない。前との差を縮めるどころか、6位から出た早大の工藤慎作(2年)に追い抜かれた。大学三大駅伝で初めての出来事だった。
「1年生のときの5区は気温が低い中で走ったが、3年生での5区は気温が高かった。苦手な寒さへの対策を考えていたので想定外だったのと、ちょっと走り方が変わったのがすごく影響した」
青学大は若林宏樹(4年)が1時間9分11秒の区間新記録を樹立。区間賞で往路優勝を果たした。山川は1時間10分55秒で区間4位。チームも往路4位で終えた。それでも復路は駒大が大会新記録で制し、総合2位で第102回大会へ望みをつないだ。
故障に苦しみつつ、七転び八起きで駆け抜けた3年間。16日の大阪・関西万博開催記念 ACN EXPO EKIDEN 2025」(EXPO駅伝、大阪)には新体制で挑む(後編は14日正午公開予定)。
■山川 拓馬(やまかわ・たくま) 2003(平成15)年7月30日生まれ、21歳。長野・箕輪町出身。上伊那農業高から駒大。大学1年時は全日本大学駅伝4区区間賞、箱根駅伝5区区間4位。2年時は出雲駅伝3区区間2位、全日本8区区間賞、箱根4区区間6位。3年時は出雲3区区間2位、全日本8区区間賞、箱根5区区間4位。大学2年の23年関東学生対校選手権(関東インカレ)男子2部ハーフマラソンで2位。自己ベストは5000メートルで13分56秒92、1万メートルで28分36秒98、ハーフマラソンで1時間1分36秒。趣味はゲーム。168センチ、54キロ。