〝岡田ええで節〟連発が本当なら、来季は90勝で連覇達成! ただし、ロースターにほとんど変更のない戦力編成は吉と出るのでしょうか、凶となるのでしょうか-。リーグ優勝、日本一を勝ち取った岡田彰布監督(65)率いる阪神は19日に高知・安芸秋季キャンプを打ち上げ。門別啓人投手(19)や野口恭佑外野手(23)を大絶賛する指揮官は、若手の成長をV2への原動力にする考えです。一方で外国人野手の入れ替えはなく、フリーエージェント(FA)補強もなく、新戦力はドラフト指名の8選手(育成2人含む)と新外国人投手、12月8日開催の現役ドラフトだけ!? 現有戦力への絶対的な自信の裏返しなのですが、「そのまま!」でV2ゴールは真っ先に切れますか。
■「井川より全然いいよ」
高知・安芸秋季キャンプは19日、岡田監督の大絶賛連発で幕を閉じました。投手では来季プロ2年目を迎える左腕の門別を絶賛、絶賛、また絶賛…。
「そら門別やろう。ブルペンのあのボールを見たらなぁ。お~ん、すごい。あのストレート投げとったら、変化球も生きてくる。開幕ローテも狙える力はあるわな。そら(同時期の)井川(慶)より、全然いいよ」と話すと、来春キャンプで1軍に参加させることを明らかにした上で「隠しとときたいよ。ホンマに隠したい」。
他球団のスコアラーの目になるべく触れさせたくない…と強調し、オープン戦での登板についても「隠さなあかんわ。どっか行かそうか台湾かどっか。わからんようなところで投げさせて」とまで話しました。
野手でも野口を絶賛。「バッターはやっぱり野口やろ。(来春の)キャンプでは当然1軍に入れようと思う」と話し、秋季キャンプの練習では三塁の守備にも挑戦させました。14日には「3ケタの背番号では失礼」と話して支配下選手登録に昇格です。
■佐藤輝へのカンフル剤か
もし、岡田監督の大絶賛が本当に結果に結び付くならば、阪神の戦力層はさらにボリュームアップしますね。今季の虎投はリーグナンバーワンの防御率2・66でした。先発陣は村上、伊藤将が10勝、大竹が12勝、才木、西勇、青柳が8勝、西純が5勝です。ここに「井川より上」という門別や、ドラフト1位の即戦力右腕、下村海翔投手(21)=青学大=らが割り込んでくると、競争はさらに激化。場合によっては西勇や西純、青柳らが先発ローテからはみ出してしまうケースもある?
また、野口の長打力を評価した指揮官は、外野手のルーキーに三塁の練習を命じています。何かと攻守に注文を付けることの多い、佐藤輝に対する刺激策なのか。それとも腹の中では三塁手か、もしくは左翼手を狙わせるつもりなのか…。ともかく来季の1軍戦力としてマジで期待しているのは明らかでしょう。
■阪急・上田監督の「ええで節」彷彿
阪神の今季のチーム打率は2割4分7厘でリーグ2位。リーグ最多の494四球を奪い、555得点はリーグ最多でした。しぶとく四球を奪い、つなぎの攻撃で得点を重ねてましたが、チーム本塁打数は84でリーグ5位。もし、野口のバットが1軍戦力に加われば、唯一の弱点である長打力不足が補えます。ということはさらにチーム得点が向上する!?
今季、18年ぶりにリーグ優勝を果たし、38年ぶりの日本一に輝いた戦力にプラスアルファがあるとなると、シーズン85勝(53敗5分け)はもっと伸び、90勝以上で球団初のリーグ連覇まで見えてくる。まさに夢のような時代の到来です。
その昔、阪急ブレーブス(現オリックス)の上田利治監督は自軍の選手を取り上げて「ええで、ええで」と次々に大絶賛。「上さんのええで節」と話題になりました。まさに令和の「岡ちゃんええで節」が本当であれば、来季も独走V確実となります。
■最小限の補強は吉か凶か
一方で来季のロースターを想像した場合、門別&野口ら若手の成長以外では、ほとんど変化が見られないでしょう。捕手は梅野と坂本の併用、一塁・大山、二塁・中野、三塁・佐藤輝、遊撃・木浪。外野は中堅・近本、右翼・森下。左翼はシェルドン・ノイジー外野手(28)が減俸(今季は1億8千万円)を飲んでまで残留…という異例の結末で、外国人野手も変わりなし。岡田監督は秋季キャンプ打ち上げの日、小幡や小野寺にポジション奪取を命じました。つまり、レギュラーがあまりにも安泰しすぎることを懸念したから、名指しで競争をあおったのでしょう。
すでにFA補強には全く興味を示しておらず、今後に起こり得る補強は新外国人投手(ハービー・ゲラ投手=28歳・右投げ左打ち、レイズ)の獲得と、12月8日に開催される現役ドラフト会議だけになる見込みです。昨年の現役ドラフトではソフトバンクからリストアップされていた大竹を指名し、今季は12勝をマークする大当たり。なので今季も…という期待はありますが、果たしてどうでしょうか。
■ビッグネームが市場に
日本プロ野球で2度目の現役ドラフトとなる今回は前年とルールを一つだけ変更しています。「年俸5千万円以上、1億円未満の選手を対象選手としてリストアップした球団は、5千万円以下の選手を1人追加し、3人以上の対象選手をリストアップしなければならない」という新ルールが加えられたのです。
昨年は原則2人以上をリストアップしただけだったのですが、12球団で改革案が練られました。理由は当該ルールだと他球団の選択肢が狭められます。5千万円以下の選手を2人リストアップすることで、獲る側の選択肢が広がり、リストアップする方も5千万円以上、1億円未満の選手を現役ドラフトに出しやすくなるわけです。
少し、ややこしい説明になりましたが、要するに各球団は現役ドラフトに提出するリストに、昨季よりも高額年俸者を載せやすくなったということです。獲る側の選択肢も広がった-という理解でいいですね。そうなると、昨年よりもビッグネームが〝市場〟に出てくる可能性が濃厚です。
■V9時代の川上巨人は…
今季は阪神の大竹が12勝、中日の細川(DeNAから現役ドラフトで移籍)が140試合に出場、打率・2割5分3厘、24本塁打、78打点をマーク。この2人が成功の代表的な選手ですが、前年の大竹の年俸は2100万円、細川が1040万円です。もっともっとビッグネームの交換が実現する可能性があります。なので補強をほとんど行わない阪神にとっては、大イベントになるかもしれません。
しかし、基本的に現有勢力の維持と若手の成長分で戦力のさらなる充実を目指す岡田阪神の「動かざること山のごとし」は功を奏するのかどうか。古くはV9時代の川上巨人は王、長嶋の強打者2人がそろっていても毎オフ、戦力補強を果敢に行い、5番打者や捕手の補強を続けました。それがチーム全体の緊張感を生んだことで、V9をなし得た例があります。今オフの〝岡田流〟が来季、どうのような結果を出すのか、注目されます。(年俸はいずれも推定)
■植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。