まさか、このコラムを書く時点まで「今季の空振りゼロ」の選手がいるとは思っていなかった。しかもルーキーとは!
米大リーグは開幕から1週間が経過。クリーブランド・ガーディアンズ(先住民を意味するインディアンスが人種差別的と問題視され、今季から名称を変更)で、脚光を浴びているのが新人のスティーブン・クワン外野手(24)だ。
「(夢から)覚めるのが怖いよ。現実感がないんだ」と地元メディアに語ったのは、10日(日本時間11日)のロイヤルズ戦。「2番・左翼」で先発出場して5打数5安打で4得点を挙げたが、それ以上に驚いたのがコンタクト力だ。デビューから13日(同14日)のレッズ戦まで計24打席に立ち、計115球に対して空振りがゼロ。公式サイトなどによれば、2000年以降にデビューした選手では最長だという。
アジア系米国人で左投げ左打ちのクワンは身長175センチ、体重77キロと小柄。「三振を気にしない選手は、本塁打を放つパワーがある。自分はそういうタイプではないからね」。「フライボール革命」の影響もあって三振数が急増した近年の大リーグでは異彩を放っており、先のレ軍戦後も「また空振りをしなかった」と報じられた。
オレゴン州立大から18年ドラフト5巡目(全体163位)で入団。5年目でメジャー初昇格を果たしたクワンにとっては、まさに夢のような1週間になった。デビューから5試合の打率は・667(15打数10安打)。すでに7四球と選球眼もよく、初出場から5試合で計18度の出塁は、記録が残る1901年以降の近代大リーグで初の快挙だ。
実はアリゾナ州内でのオープン戦でも、そのコンタクト力は注目されていた。16試合で打率・469(32打数15安打)を残しながら、三振はゼロ。3A時代の昨年9月以来、三振を喫していないからだ。
「打席でのアプローチが素晴らしい」とフランコナ監督の評価も高い。「山椒は小粒でもピリリと辛い」という日本のことわざがピッタリの選手だ。
■田代 学(たしろ・まなぶ) サンケイスポーツ営業局長。1991年入社。プロ野球や五輪担当などを経て、2001年から13年11月まで米国駐在の大リーグ担当キャップ。全米野球記者協会の理事や、13年ワールドシリーズの公式記録員を日本人記者で初めて務めた。米国での愛称は「ガク」。