大相撲で慶事が続く。1月の初場所後に稀勢の里が横綱へ上り詰め、同じ田子ノ浦部屋の弟弟子、高安が5月の夏場所後に大関へ昇進。7月の名古屋場所(9日初日、愛知県体育館)を新大関として迎える。
その高安は、しこ名をかえずに通すことになった。本名のまま大関を務めるのは、輪島、北尾、出島に続き史上4人目。新十両昇進を果たした際、父・栄二さん(66)が先代師匠の故鳴戸親方(元横綱隆の里)へ「高安家の誉れ。これからも高安の名前を広めてほしい」と希望を伝えて了承されていた。大関自身も変更する意思はないという。栄二さんは11年前に腎臓がんを患い片方の腎臓を摘出したこともあって、高安はそんな父の意向もくんでいる。
「高安動脈炎」。大関と同じ読み方の疾病で、いわゆる「高安病」。かつては「大動脈炎症候群」といわれ、厚生労働省が特定疾患(難病)に定める自己免疫疾患による血管炎の一つだ。この病気は明治41(1908)年、眼科医の高安右人(みきと)博士によって報告された。国内の医師が発見し、日本人医師の名前が国際基準として冠された数少ない病気の一つ。大関より一世紀も前に、その名を世界へ発信したことになる。
高安病患者は全国で約6000人。9割が女性という。患者自身が運営する組織「あけぼの会」の一人は「希少難病なので、知ってもらい認知されることに大きな意味がある。同じ『高安』として番付が上がるのを、仲間と楽しみにしていた。活躍や昇進で多くの患者さんが元気をもらい、勇気づけられたと思う」。
精神科医カール・ユング(スイス)は、「シンクロニシティ」という原理を提唱した。「意味のある偶然の一致」のことで、日本では共時性、同時性とも訳される。別々の出来事が離れた場所で時空間的に一致して起こり、当事者に心理的関連を感じさせる-。「そもそも、ひとの意識同士は集合的無意識によって交流している」と述べた。
小人(しょうじん)は縁に気づかず、中人は縁を生かせず、大人(たいじん)は袖すり合う縁も縁とする、という。病気と闘う「高安」さんに幸あれ、と願う。