晴れて恋人の名を口にできた。もう隠す必要はない。安芸市営球場で汗を流す若虎を見つめながら、金本監督が胸の内に秘めていた熱い思いを語った。糸井が欲しい-。初めてのラブコールだった。
「(糸井は)やっぱり躍動感があって、足もあるし、長打力もある。必要な戦力? そりゃそう。だから獲りにいく」
大きくうなずくと、来季36歳という年齢についても、周囲の不安説をきっぱりと否定した。
「(年齢は問題ないと)判断している。よく体を鍛えている選手だと聞いているしね。僕がタイトルを獲ったのも36歳のときだし。体は(当時の)僕より若いと思う」
113打点を挙げ、自身初のタイトルを獲得したのが2004年。36歳シーズンだった。翌05年には打率・327、40本塁打、125打点で優勝に貢献し、セ・リーグMVPを獲得した。鍛えている人間にとって、年齢など関係ない。鉄人と超人-。自分と同じ匂いを感じていた。
午後3時1分。FA宣言選手が公示された1分後に高野球団本部長が糸井に「ぜひ、交渉にあたりたい」と電話で伝えた。糸井から「それならば、すぐにお願いします」との返答を受け、すぐさま日取りが決まった。交渉解禁となる11日、午後に大阪市内のホテルで交渉を行う。「監督に出ていただくというのが一番の誠意」(同本部長)と、金本監督自らテーブルにつくことも、球団から正式に発表された。