現状維持の年俸5億円でサインしたオリックス金子千尋 新聞記者の手腕の見せどころといえる? 契約更改の季節が、終わろうとしている。
「アップですか?」
「ダウンですか?」
選手は基本的に自分の年俸を明かさない。それゆえ毎年、こんなやりとりで推定金額を割り出すわけだ。そんなジャブから始まる選手との推理戦は例年通りなのだが、今年は少しばかり様相が違った。それは、契約更改の序盤の時期に登場したある選手が、包み隠さず明かした年俸に集約される。
「512万円です!」 一瞬、報道陣が目を丸くしたのは言うまでもない。なんで、そんなにキリが悪い数字なの? 実は、このオフに選手会から手取りが把握できるよう、税抜きの年俸提示額徹底のお願いが球団側に通達されたのだ。それが、摩訶(まか)不思議な数字につながった。
記者が担当するオリックスも、今年から税抜き年俸のみを提示するように変更した。球団関係者によれば金額にかかわらず、育成選手から5億円で球界最高年俸となったエース・金子千尋投手(33)に至るまで全プレーヤーに反映させているという。そのため、選手の公表額が税抜きとなり、新聞記者にとっては前年まで税込み年俸を前提に駆け引きをしていたひずみから、困った事態が発生した。
例えば、今季年俸900万円と推定していた選手が「50万円ダウン」と言ったとする。実際に交渉の席で提示された金額は750万円。今季年俸がそもそも800万円だったのだが、この100万円の誤差は、従来ならば推定するしかない年俸の誤差といえる。
ところが、今年から税金分がさらに誤差を拡大してしまい、前年の推定年俸と比較すると、減額制限を超えてしまうケースが出てきた。ただでさえ推定上の数字ゆえ、誤差があるのに、それを拡大する税抜きの問題。価格表示の変更が混乱を招いた。
正直に正しい金額を教えてくれる選手もいるが、あくまで質問に対する回答、表情から推察している年俸。税抜きになったせいで、予想と実際の年俸に開きが出てしまったのでは…。と、言い訳する次第です。(小松真也)