2日のヤクルトとのレギュラーシーズン最終戦後のセレモニーでCSファイナル突破を宣言した阪神・藤川球児監督 阪神・藤川球児監督が15日開幕のCSファイナルステージに向けて、自ら動く。他人には任せない。試合間隔が空くため、選手を6日から宮崎で始まる若手主体の「みやざきフェニックス・リーグ」へ通常通りに派遣するが、今回は虎将自ら指揮を執る。2023年も岡田彰布監督(現オーナー付顧問)が足を運ぶも、ネット裏から視線を送っただけ、しかし今の指揮官はベンチに入る。通常なら采配を振る2軍監督を押しのけて…。いかにも藤川監督らしい〝押しかけ采配〟だ。
勢いのある選手が出てきてほしい? との問いに「自分は基本、ずっと向こう(宮崎)にいるのは、それが理由です」と返答。さらに、こうも続けた。「残留でSGLで練習している時はある程度、調整をすればいいけれど、向こうでの試合は、しっかりと見ていますから。自分の目の前では真剣にやってもらうということですね」
前例にとらわれない藤川監督そのものが、短期決戦を前に求められる〝勢いのある戦力〟と思えてしまう。仮に1週間の宮崎滞在なら、6日の韓国ハンファから12日オイシックスまで6試合。投手は入れ替わりに登板し、野手陣はピンポイント参戦。豊富な先発投手全員がローテを組むことは考えられない。誰かが中継ぎに回る。誰かがメンバーから漏れる。野手に目を向ければ遊撃手と左翼手に代打陣の見極めがカギを握る。だから、コーチ陣の眼力に一定の信頼を置きながらも、ダメ押しの〝参戦〟。自分がいれば選手は真剣にやるー。史上最速優勝監督としての存在感を改めて自身で表現する決断だった。
85勝54敗4分。貯金5の2位DeNAとは13差。何とか貯金1で終えた3位巨人とは15差もある。どちらが相手でもファイナルで阪神敗退なら、CS廃止論が勢いを増す。問題点は確かにあるが、興行上、この制度にピリオドを打つのは難しい。今季は特に注目を集める「日本シリーズ進出決定戦」。藤川監督は、やや唐突気味に自分のスタンスを示している。
「僕はプレーオフはやるべきだと思っています。面白いじゃないですか。絶対にやった方がいいと思っている。ファンの方が一番よろこべる瞬間の機会を作り出すことがめちゃくちゃ大事。やらなきゃいけない。なくしてしまったら何もなくなってしまう。周りの方を感動させ、気持ちが動くゲームを消してどうするんですか」
強烈なCS賛成派だからこそ負けられない、とは言い過ぎか。廃止論を封じるには勝つしかない。「選手たちには、いろいろなことに対して気付かせないこと。何と言いますかね。言葉にすると分かってしまうので。特に言えないことが増えてきました。導くことが仕事ですから。その辺りはやめておきましょう。話しても分からないと思うので。これから、やることは、ほとんど分からない。終わった後に話しましょう」。噛んで含めるように言葉を並べるも、再読しても意味がわからない難解な言い回しが藤川流の臨戦態勢の証し。コンディション不良者対応のため、ベンチ入り31選手全員の登録を抹消した。あとは宮崎で10・15に向けた最終準備を整えるだけだ。
若手に試合機会を与える「みやざきフェニックス・リーグ」。その名の由来は宮崎県の象徴で県木の「フェニックス」だ。病害虫に強く長寿であることから、カナリー島原産でヤシ科の樹木は、不死鳥を意味する「フェニックス」と名付けられた。〝不死鳥〟だった今季の阪神野球をさらに強固にし、磨くために、2軍虎将を脇に追いやって、宮崎采配を決めた。他人とは違う。自分の目を信用するー。1年間、人並外れたプライドで、このスタンスを示し続けた藤川監督が南国で最後の仕上げに入る。
■稲見 誠(いなみ まこと) 1963年、大阪・東大阪市生まれ。89年に大阪サンスポに入社。大相撲などアマチュアスポーツを担当し、2001年から阪神キャップ。03年には18年ぶりのリーグ優勝を経験した。現在は大阪サンケイスポーツ企画委員。