優勝後、笑顔がはじけた大山(左端)。悩み抜いて、歓喜のときにたどり着いた 史上最速優勝を成し遂げた、今季の阪神の舞台裏を探る連載「球児トラ界隈」。第8回は大山悠輔内野手(30)が登場だ。オフに国内フリーエージェント(FA)権を行使して、巨人入りに心が傾きながらも残留を決断。3、4番の森下翔太外野手(25)と佐藤輝明内野手(26)を5番で〝献身的〟に支え続けた日々を振り返った。
覚悟を決めて残った。虎でもう一度、優勝と日本一をかなえたいという目標のため、大山はこれまで以上に自分を捨てて身を粉にした。迷いに迷ったオフを越えて、最高の瞬間にたどり着いた。
「自分でしっかり決断したことだったので、覚悟も決めていました。しっかりチームとしてできた一年だったと思うので、そこはすごく良かったと思いますけど、やっぱり個人的にはまだまだだと思います」
巨人移籍へ大きく心が揺れた日もあったが、残留を決断。2024年11月29日の会見で「チームメートともう一度、優勝、日本一になりたいという気持ちが強かった」と語って以降は、この歓喜のときだけを目指してきた。
今季、藤川監督から言い渡された役割は明確そのもの。5番として3、4番の森下、佐藤輝が存分に暴れた後の塁上の〝掃除役〟を求められ、打点を挙げてくれと伝えられた。2月の春季キャンプの練習でも、気持ちよく大きな当たりを打つ姿はなかった。「犠飛もそうですし、たとえば内野が下がっていれば内野ゴロでも1点入りますし。簡単そうに見えるんですけど意外と難しい。自分の中で『こういう打ち方をすれば、ここに(打球が)行く』というのを見つける」と、試行錯誤を繰り返した。
前半戦はわずか5本塁打で終えた。28本塁打を放った2020年から3シーズン連続で20本塁打以上をマークした姿はそこにはなかったが、シーズンが深まるにつれて勝負強さが際立った。ここまで130試合に出場し打率・260、9本塁打、68打点(16日現在)。決勝打を放った回数でも森下(19)、佐藤輝(18)に次ぐ14度と後輩たちを支えた。
シーズン前には「自分が打点を挙げることで、その前の凡退が薄れることは間違いない。薄れることによって次から(2人が)いつもどおりに打席に入れると思う」と語っていた。今はどう感じているのか-。その答えも、大山らしかった。
「僕が2人を支えるみたいなことを言っていましたけど、実際は僕が引っ張られて来た。『何をやっているのかな』というのは僕の中ではありますね」
どこまでも謙虚に、黙々と、仲間たちのための一打を積み重ねていく。もう一度、虎で味わいたかった日本一が、見えてきた。(渡辺洋次)