「NEC軽井沢72」で優勝した安田祐香(中央)。左から青木瀬令奈、キャディーで姉の美祐さん、(一人置いて)中村心、大西翔太コーチ 「ワンチームです」─。個人競技であるゴルフの取材で初めて選手から聞く言葉だった。安田祐香が後続に7打差をつけて圧勝した8月14-16日の「NEC軽井沢72」。冒頭の青木瀬令奈の発言は、表彰式後に行われた写真撮影中に目の当たりにした光景にピッタリだった。
優勝者は表彰式が終わると、18番グリーン上にとどまって記念撮影することがお決まりだ。キャディーやコーチ、家族と一緒に撮影することも多い。だが、今回の安田の場合は、大西翔太コーチだけではなく、青木や中村心といった現役選手も笑顔で集合写真に加わっていた。
プロ5年目の2024年、安田は青木を指導する大西コーチに師事した。すると、その年の「ミヤギテレビ杯ダンロップ女子オープン」でツアー初優勝。それから3年連続で頂点に立っている。安田が持つ抜群のショットの距離感に天賦の才能を見いだした大西コーチは、主にパットの改善に着手。ロープを使った練習で理想のストロークを体に覚え込ませ、芝や風の影響を最小限に抑えるため、球の「順回転」の精度が向上する打ち出し方を伝えてきた。
躍進の立役者は1人だけではない。ともに大西コーチに学ぶ青木は、2020─21年シーズンから4季連続で年間の平均パット数でツアー1位を記録した名手。恒例となっているオフの沖縄合宿では、安田に惜しみなくラインの読み方やパットの練習方法を伝授してきた。これ以上ない〝先生〟から最高峰の技を教わる安田は「とにかくイメージが良くなった」と感謝する。
安田だけではなく、青木は将来を嘱望される17歳のアマチュア・後藤あいにも小技の極意を教えている。後藤も「瀬令奈さんのおかげでうまくなった。アプローチからパターまで全部教えてもらった」と頭を下げていた。
コーチならまだしも、なぜ青木は優勝を争う可能性のある現役選手に、ためらいなく技術を伝えるのか─。その理由を聞くと、33歳のベテランは「ギブ・ギブ・ギブの精神です」と笑った。「返ってくるか分からないけど、そういうことはどこかでつながっている。選手だからこそ分かることもある。自分よりランクが上の子から感謝されると『やっている場合じゃない…』と思うこともありますけどね」。