ペンをくわえてフォーム確認したドジャース・大谷翔平(撮影・横山尚杜) 登板前日に珍しい光景があった。敵地ブルージェイズとの第3戦を控え、ドジャース・大谷翔平投手(31)は一人でブルペンに向かった。その前日には既にブルペン投球をこなし、自身の球筋や傾斜は確認済み。通常はトレーナー、投手コーチ、スタッフらが付き添うが、無人の空間で左手にはグラブ、右手には硬球、そして口にペンをくわえた。
何度も足踏みをするようにプレートに置く軸足の位置を調整し、一連の投球動作には入らない。するとスタッフに借りたというペンを使って、軸足を置く位置に線をなぞり、印をつけた。また、捕手方向にプレートと垂直のラインを引き、投球後に軸足が流れる位置にめぼしをつけた。翌日の試合は6回4安打1失点(自責ゼロ)。好投と言える内容後に振り返った。
「キャッチボールからそんなに感覚がよくなかった。自分の立ち位置、立つ角度は球場によっても、ブルペンとマウンドでも違う。感覚ばかりに頼ってくるとちょっとずつズレてくれるものではあるので、その確認」
大谷は感覚だけに頼る調整を嫌う。投球、打撃とも違和感を覚えたときに客観的視点に立ち返る。自分が正しいと思う感じ方や見え方は、実際に正しいとはかぎらない。人は自分の感覚を頼りに、その感覚を〝信じたい〟と思うが、それは逆に「ちょっとずつズレてくれるもの」だという認識がある。
実際に大谷は打席に立つたびに、バットをホームベースに添え、打席で自身が置く軸足の位置を確認、固定している。また、ベイツ打撃コーチは「彼はデータ愛好家。相手投手やその持ち球に合わせて、自分のセットアップを持っている。それに合わせて調整している」と打撃フォームも対戦する投手に合わせて使い分けるという。感覚で微調整するのではなく、あらかじめパターン化し、対応している。打席ごと、投手ごとに感覚で修正するのとでは、誤差のレベルが変わってくるだろう。
大谷は同日の取材対応で打席での考えを「ストライクにくれば(バット)振る。シンプルに何も考えずに作業だと思えばいい」と語った。大谷は近年、不調の波が極端に小さいのは、感覚に頼らず自身のプレーを客観的に捉えている点にあるのかもしれない。(MLB担当・横山尚杜)