心理的に「阪神不利」という予想は何ら裏付けがありません。CSファイナル必勝の要素を全て揃えているのは藤川球児監督(45)率いる阪神です。レギュラーシーズンの全日程が終了し、阪神は15日開始のCSファイナルSに向けた調整に入りました。ファーストS(11日開始)の勝者は2位のDeNAか3位の巨人か。ただし、どちらのチームが勝ち上がっても阪神はアドバンテージの1勝も含め絶対的に有利です。根拠は負けようのない投打のデータがズラリと揃っているからです。
セ・パのレギュラーシーズンの全日程が終了しました。3月28日の金曜日に同時開幕したシーズンは12球団が143試合を戦い抜き、まだまだ暑さの残る10月初旬に全ての試合を終えたのです。と同時に驚きの数字が弾き出されていました。両リーグ総観客数は史上初めて2700万人を超え、2704万286人となったのです。
あるプロ野球のOBは話しました。
「背景にあるのは大谷効果ではないか。大谷翔平がドジャースで、大リーグで大活躍し、日本人全体の野球に対する興味が格段に増した。それが野球場に行ってみよう…という行動に結びついたのではないか」
確かに背景的には〝大谷効果〟は確実にあるでしょう。2023年WBCで大谷が大活躍し、侍ジャパンが世界一に輝いて以降、日本全国に広がっていった野球熱はいまだ冷めやらず、興行にも大きな影響を与えた…という見方は間違ってはいないと思います。
一方でセ・リーグでの阪神人気が観客動員を押し上げたのは今年も変わりません。阪神は296万2268人の観客数。セ・リーグでは巨人の282万3050人を抑えて、リーグトップ。パ・リーグでは優勝したソフトバンクが271万7929人(3球団とも主催71試合)でトップですから、阪神は12球団で一番の観客動員数を誇ります。また、阪神人気はビジターの試合でもホームチームに多大な好影響を及ぼしています。いつも東京ドームや神宮、横浜やバンテリンなどでも外野スタンドの左半分は阪神ファンが埋め尽くし、大声援を送っていました。
かつて球団首脳は「タイガースのおかげでセ・リーグの他の球団も潤っているんだ。ウチが主張したことに反対するなんて、おこがましい…と思ってもらわないと…」なんて冗談半分で話していましたが、阪神タイガースという存在がプロ野球の人気を下支えしているのは間違いのない事実ではありますね。
さてレギュラーシーズンを85勝54敗4分けの貯金31で駆け抜けて、優勝した阪神の次なる標的は15日から始まるCSファイナルです。アドバンテージの1勝こそありますが、先に4勝(阪神は実質3勝)しなければ、25日開幕の日本シリーズには進出できません。11日から始まるファーストでのDeNAー巨人の勝者と対戦するわけです。
心理的に「阪神不利」という関係者もいます。まず実戦感覚。最終戦は2日のヤクルト戦(甲子園)。先発・村上が好投し、佐藤輝が40号本塁打を放って快勝した試合です。そこから15日まで中12日。宮崎で行われるフェニックス・リーグで主力選手は調整しますが、やはり真剣勝負から離れてしまうリスクはあるでしょう。逆にファーストを勝ち抜いたチームは実戦感覚を研ぎ澄ませたばかりか、勝った勢いを持って甲子園に乗り込んできます。
さらにレギュラーシーズンで大差をつけた相手との〝敗者復活戦〟に臨まなければならない、心理的な理不尽さ。2位のDeNAとは13ゲームで巨人とは15ゲーム差だったのに、アドバンテージはわずか1勝。球界内外に「こんなCSの制度はおかしい」という声がある中で、阪神の選手たちは「負けてもともと」の心理状態で向かってくる相手と戦うわけです。想像以上にやりにくさはあるはずです。
それらを承知しているからこそ、藤川監督はCS不要論を否定し、「こんな面白いものを止めてどうするんですか」と語気を強めたのでしょう。調整の場である宮崎に自ら乗り込み、ベンチで采配を振る…という異例の行動を取ったのも、逆に見れば、それだけファイナルでの「3勝」を容易ではないと見ている裏返しです。
本当に阪神はファイナルで「やばい」のかー。データを見れば全然、大丈夫です。チーム防御率2・21。ファイナルで先発するであろう村上は14勝4敗、防御率2・10ですし、才木も12勝6敗、防御率1・55です。リリーフ陣も安定していて、DeNAと巨人のどちらが出てこようと、そう簡単に点は取られません。さらに特筆すべきは失策数の少なさです。ここ何年もリーグワーストの失策数が、今季は57でリーグ最少です。投手がよくて、守備も堅固となれば、相手に無駄な点を許すことはないはずです。実際、チーム失点は352です。12球団で一番少ないですね。
攻撃面でもチーム盗塁数はリーグトップの100です。犠打・犠飛も最多の161です。本塁打の出にくい甲子園で戦うわけで、こうしたスモールベースボールができる阪神打線は、少ない得点のチャンスを確実に生かす術を心得ています。短期決戦では投手力や守備力の優劣や、細かな攻撃面のつなぎができるか、できないか…で局面は変わります。
あくまでも143試合の投打のデータを紐解くと、阪神に不利な材料は何ひとつ出てきません。なので心配は無用なのですが、唯一の不安といえば、143試合で見せつけてきた「阪神らしさ」を短期決戦で見失うことぐらいですかね。藤川監督が普段通りのタクトを振るならば、どこにも死角は存在しませんね。
■植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。