阪神の新入団選手にスポットをあてた連載「なにわ虎男子」。ドラフト1位・伊原陵人(たかと)投手(24)=NTT西日本=の第2回は中学時代を振り返る。小学生の頃から能力が高かったものの、進学後は柔道部へ入部。そこから野球の道に復帰して周囲に追い付くために努力した時期は、ストイックに練習する原点となった。(随時掲載)
誰もがあこがれるプロへのドラフト1位入団。エリート街道を歩んできた者が多い中、伊原は中学時代にまさかの〝寄り道〟をした。
「中1の時は柔道をしていました。小6で『野球はもういいや』と思ったので全然、する気がなかったです。友達と遊ぶのが楽しいと思った時期もあったので『それでもいいのかな』という感じでした」
小学生の頃は左利きながら内野の全ポジションをこなすほどのポテンシャルの高さを示していただけに、周囲も驚いた。奈良・八木中で柔の道を選んだのは、仲の良い同級生の誘いもあった。未体験の競技に前向きに取り組み、大会などにも出場した。
ところが、1年の2月のことだった。それまでは「うわ、しんどそうやな…」と全国大会出場経験もある野球部を横目で見ていたものの、ふと心のスイッチが入った。
「何か突然、降りてきました。『野球、しようかな』と」
思い立ったように柔道部の先生に退部を申し入れると、手に取ったのはバリカン。長髪を刈り上げて丸刈りにし、再び学校中を驚かせた。今度は野球部の河内監督に入部を懇願。一度は断られたが、2日連続で頭を下げて何とか承諾され、白球を手にする日常が戻ってきた。
柔道部では投げ技を繰り出すために腕の力を鍛えたことから「知らない間に野球で使わないところが鍛えられたのかな」とパワーアップを実感。何より強豪チームでの競争に勝つために練習にストイックに取り組めるようになり、もともとあった精神的な弱さを克服できた。
「出遅れたことを自分でも感じていたので『頑張らないといけない』と努力はしているつもりだった。そのくらいから変わったと思います」
13歳で迎えていた人生の大きな分岐点。柔道への〝寄り道〟は決して無駄でも遠回りでもなく、プロへの道につながっていた。(須藤佳裕)