阪神・佐藤輝明内野手(25)が1軍復帰すると3連勝! 懲罰2軍落ちの屈辱から腐ることなく這い上がってきたことはチーム全体に好影響を与えますね。岡田彰布監督(66)率いる阪神は西武3連戦(甲子園)をスイープし、59試合消化時点で29勝26敗4分けの貯金3で首位に肉薄。5月14日の中日戦(豊橋)のエラーで2軍落ちを命じられた佐藤輝は腐ることなく結果を残して、7日の西武戦(甲子園)から1軍に昇格。そこからチームもV字回復です。佐藤輝不在の19試合は8勝11敗。西武戦前の10試合は2勝8敗でした。阪神にとってサトテルの存在がいかに重要かを知らしめた流れですね。
これほどまでにチームの空気を変える! 佐藤輝はやはりチームの看板選手であり、選手間でいかに心を寄せられているか…を知らしめた3試合でしょう。7日の西武戦(甲子園)から1軍に昇格し、スタメンに名を連ねた途端にチームは3連勝。その直前の楽天3連戦(甲子園)は3連敗。西武戦前の10試合は2勝8敗でした。
「弱い西武との対戦だったから…」というネット裏の声は確かにありますが、それでも交流戦に入って以降、1勝7敗だったチームの流れはサトテル再登場とともに確実に変わったのは事実ですね。
佐藤輝の1軍昇格後の打撃成績は7日の西武戦から4打数2安打、4打数ノーヒット、3打数ノーヒット。しめて11打数2安打です。今季の通算成績は38試合に出場して打率・207、3本塁打の17打点。まだまだ打撃面は本調子には、ほど遠くて、ファンが期待するような豪快なスイングはあまり見受けられません。
それでも佐藤輝の野球に対する姿勢そのものが、チーム全体に刺激を与えたのは間違いありませんね。昇格した日の西武戦では二回先頭で迎えた第1打席。与座の直球を中前に。その後、三塁まで進むと木浪の一塁ゴロでホームにヘッドスライディング。先取点を奪うと五回にも右前打。守っても4度の守備機会でノーエラー。2つのゴロは難しいバウンドでしたが、ランニングスローで出塁を許しませんでした。まさに泥だらけで躍動したのです。
試合前には岡田監督から「(チームの)起爆剤になってくれ」と直接、声を掛けられたといいます。指揮官の期待に応えるプレーを誓い、そこからの3試合は気迫を醸し出しています。期待されている、それだけの立場の選手…と言ってしまえばそれまでですが、人の気持ちは、そう単純なものではないことは、一般社会で仕事をしている人達であれば、誰もが察することができるでしょう。
5月14日の中日戦(豊橋)では2ー1とリードの八回裏無死二塁のピンチで、田中が送りバントし、打球は捕手・坂本の目の前に。坂本は迷わず三塁に送球しました。ストライク送球でアウトのタイミングでしたが、タッチを焦ったのか佐藤輝は捕球できずに、走者を生かしてしまいました。そこから痛恨の逆転負け。
「うまいことな、バントで(アウトに)いけたと思うたけどな。あれで終わりよ。お~ん。いやいや、普通のプレーやんか。それはもうどうこうの問題じゃないやろ。そんなのは」と岡田監督は激怒し、その夜のうちに2軍落ちを命じていました。
その試合ではエラーは犯しましたが、4打数2安打で得点にも絡んでいました。確かに致命的なエラーだったかもしれませんが、七回には木浪もエラーを犯し、八回に逆転打を打たれたのは村上です。敗戦の責任を一人に覆いかぶせられたような一罰百戒的な懲罰2軍落ちはどうなのか…。実際に佐藤輝が〝消えた〟15日の中日戦(バンテリンD)の試合前の練習風景は異様な空気でしたね。選手達は誰かの顔色を伺うような感じで、コーチ陣の顔も引きつっているような…。
それから再登録可能な10日間が過ぎても、佐藤輝は1軍に呼ばれませんでした。2軍での成績は17試合に出場し、打率・318、2本塁打、15打点。やはりファームでは安定した成績を残しましたが、岡田監督から「昇格」の指令はなし。
逆に「昇格させない」理由は次々と…。
「2軍のピッチャーやからのう」
「全部ホームラン打ったらなぁ。全打席ホームラン打ったら価値あるけど」
「ヒットの数だけエラーしてるやん」
こうなってくると、何か個人的な恨みなのか、それとも毛嫌いしているのか…と思う人がいても不思議ではありません。実際、両者の関係性を勘ぐった他球団の編成担当者は「阪神が使わないのならウチにくれないかなぁ。交流戦明けの後半戦だけでも20本塁打以上は打つよ」とトレードの打診をしかねない発言をしていたことを、このコラムでも紹介しました。
こうした状況でスネたり、横を向いたり…はどんな社会でも見受けられることです。でも、佐藤輝は2軍で自らのプレーを反省し、気持ちを入れ替えて野球に取り組んだと思います。年俸1億5000万円(金額は推定)をもらっている選手です。謙虚に自分を見つめ直して再起を目指すのは当然といえば当然ですが、簡単には心を切り替えられなかったはずです。
もう長いこと、阪神を取材しています。かつての虎のスター選手達の誰もがこのような姿勢だったか? と聞かれれば首を横に振らざるを得ませんね。どこの誰とは言いませんが、起用法に不満を抱いて自ら2軍落ちを志願した選手や、首脳陣の特打ち指令に反抗的な態度を露にした選手…。多くのファンの支持を得ていると勘違いしたのか、スター選手の奢りを隠そうともしなかった主力選手達を見てきただけに、今回の佐藤輝の姿には妙に感動するのです。
選手達も佐藤輝が決して卑屈にならず、ふて腐れず1軍に帰ってきたことを歓迎したはずです。そして、それぞれの選手が自らを省みて、野球に対するガムシャラな気持ちを思い起こしたのでしょう。9日の西武戦では三回2死二塁の場面で西武・奥村のファウルフライを追いかけてカメラマン席に飛び込んだ渡辺のプレーにも〝サトテル効果〟が見えたと言えば言い過ぎですかね。
さあ、これからオリックス、ソフトバンクとの6連戦。その後、連敗した日本ハムとの1試合があります。大事な7試合をどういう成績で終わるか。〝逆境〟を跳ね返した佐藤輝が難局を切り開いてくれそうな気がしますね。
■植村徹也(うえむら・てつや) サンケイスポーツ運動部記者として阪神を中心に取材。運動部長、編集局長、サンスポ代表補佐兼特別記者、産経新聞特別記者を経て特別客員記者。岡田彰布氏の15年ぶり阪神監督復帰をはじめ、阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。