東京五輪の体操女子団体総合の表彰式で記念撮影を終え、マスクを着ける米国のシモーン・バイルス=2021年7月、有明体操競技場 スポーツ界のメンタルヘルス(心の健康)を研究する国立精神・神経医療研究センターの小塩靖崇研究員が、2026年までの達成目標として7月に国際オリンピック委員会(IOC)が発表した「メンタルヘルス・アクションプラン(行動計画)」の翻訳に携わり、日本語版として今秋公開された。来年のパリ五輪でも重要な分野で「参考になる指針があれば、日本のスポーツ組織も何かしら取り組みを始めやすい」と意義を説いた。
行動計画によると、19年の研究ではエリート選手の34%、元選手では26%が不安やうつの症状を経験していることが分かった。21年東京五輪でも体操女子のシモーン・バイルス(米国)が「心の健康」を理由に棄権しており、スポーツ界にとって喫緊の課題だ。
行動計画でIOCは「ケア環境の改善」など五つの柱について12の目標を設定。さらに26年までに実施を目指す16のアクションも示し、メンタルヘルスの取り組みが五輪で「確実に実施されるようにする」と明記。欧米諸国に比べ、アジア・アフリカなどの地域における実態把握が十分に進んでいない現状を踏まえ、格差解消を念頭に「多様なアプローチが含まれていること」など具体例を挙げて方向性を出した。
杭州アジア大会でも日本選手団に加わった選手の心のケアの専門家「ウェルフェアオフィサー」については24年パリ五輪、26年ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪での増員が掲げられている。
IOCが選手向けに作成したメンタルヘルス教材の日本語翻訳も主導した小塩氏は、11月までメルボルン大学で客員研究員として経験を積んだ。「アスリートのメンタルヘルスの研究については世界、特にメルボルンはかなり先を行っている」としつつ、自分にできることとして「日豪比較ができれば有用な知見になる」と述べる。今後の行動計画の活用に「日本はまだビギニングステージ(初期段階)にある。書かれていることを参考に取り組みを計画していくことが大切」と語った。