(SMBC日本シリーズ2021、オリックス4x-3ヤクルト、オリックス1勝、20日、京セラ)第1戦から野球の醍醐味(だいごみ)、面白さが詰まった日本シリーズ。プロ野球最高峰の舞台で起きた事象、プレーを、豊富な取材経験を持つ東山貴実編集委員が、主観をまじえて考察する。
「何か起こします」-。オリックス・中嶋監督の言葉通り、初戦はあまりに劇的な幕切れとなった。
シリーズ史上初となる前年の最下位チーム同士の対戦。一部に視聴率を懸念する声もある中、歴代のシリーズ視聴率ランキング(いずれもビデオリサーチ調べ、関東地区)を振り返ると、1位は1978年の阪急-ヤクルト第7戦の45・6%。2位が96年第2戦のオリックス-巨人の43・3%、3位が同第1戦の43・1%。全てが前身を含めオリックスの試合なのが実に意外で面白い。今年も、日本シリーズの〝キラーコンテンツ〟となってきた、オリックスの本領発揮だった。
試合を面白くしたのは、山本に対して、ヤクルト打線が積極的にカーブを打っていったことだった。
今や球界ナンバーワンとなった山本の投球で、直球、フォークボールに次いで割合が大きい球種がカーブ。10日のロッテとのCSファイナルステージ第1戦では126球中23球を投じ、初球の5球を含む計8球の見逃しストライクを奪った。
この日のヤクルトはカーブ全17球中、見逃しはわずか2球。安打こそなかったが、凡打3、ファウル5、空振り4、見送りボール3と、積極的に狙っていった。CSでカウント球として有効に使えていた〝第3の球種〟にバットを出された山本は、序盤から球数がかさんで6回まで112球。心身ともに消耗させられての降板となった。
山本のカーブは昔で言う「ドロップ」のように縦に大きく割れる。落差の大きいフォークと合わせ、打者を「高低」で揺さぶるのが特長だ。スライダーなど内、外角への横の変化は打者の視線は平行に移動するだけだが、「高低」だと視線が大きく上下する。このため投球をラインで見ることができなくなり、点でしか捉えられなくなる。
2014年、15年の日本シリーズ。阪神、ヤクルトが山本と似たカーブの軌道を描くソフトバンク・武田と対峙(たいじ)した後、カーブの〝亡霊〟を見るかのように他の投手にも沈黙したのは決して偶然ではない。その意味で、山本のカーブに果敢にコンタクトできたヤクルト打線の2戦目以降が楽しみだ。(編集委員)
■東山 貴実(ひがしやま・たかみ)1967(昭和42)年生まれ、54歳。京都市出身。早大卒。巨人、阪神、MLBなど野球記者歴20年以上。本紙運動部編集委員。