田中将大投手(32)=前ヤンキース=の電撃復帰で、一気に注目度が増した楽天。ゼネラルマネジャー(GM)兼任でチーム8年ぶりの日本一を目指す石井一久監督(47)を、ヤクルトで9年間チームメートだった真中満氏(50)=本紙専属評論家=が直撃した。新監督はどんな質問にも本音で回答。2015年にヤクルトを14年ぶりのリーグ優勝に導いた先輩監督の真中氏を、何度もうならせた。(取材構成・松尾雅博)
石井監督と真中氏はヤクルトで1993、95、97、2001年に日本一を経験。01年の日本シリーズ(対近鉄)では、ともに優秀選手賞を獲得した。気心が知れているとあって、リモートでの対談は、なごやかな雰囲気が漂った。
真中氏(以下、真中) 「監督1年目で心配なことはある?」
石井監督(以下、石井) 「常に心配していたいなと思います。マイナスのことを考えておけば、それ以上のことが起きても、ちょっとしたマイナスで済むので。みんな、ちやほやしてくれるけど、そんなにうまくはいかないですよ」
真中 「こういう野球を目指したい、というものは」
石井 「その場しのぎ野球をしたいですね。実際には想像できないことが起きるじゃないですか。監督、コーチもそうだし、いろんな状況判断をしないといけない。なるべく正解をチョイスしたいですね」
真中 「理想の監督像はあるの?」
石井 「ありません。その場しのぎが大事なので(笑)。理想を追い求めたくないというか、目の前のことに、しっかり対応しようと思います」
真中 「カズ(一久)らしく、自分のペースで自分の野球をするというイメージでいいのかな」
石井 「143試合あるので集中力を切らさず、しっかり戦っていきたいですね。GMをやって思うのは、チームは1軍だけじゃないということ。2軍の監督、コーチともコミュニケーションが非常に大事になります」
真中 「三木2軍監督(前1軍監督)は1軍のこともよく知っているから、やりやすい環境じゃないかな」
石井 「一昨年も2軍監督をやっていて、明確にこの選手はいいという話をしてくれます。こちらからこの選手をではなく、2軍から推薦してくれるのは、すごく頼もしいですね」
真中 「自分もヤクルトで2軍監督の経験がある。そういう環境はやりがいがあるね」
石井 「2軍監督が選んだ人が(1軍に)上がって使ってもらえると、選手やスタッフのモチベーションにもなるので」
真中 「復帰した田中将大に期待するところは?」
石井 「大変だと思いますよ。周囲に『すごいことになった』とハードルを何段も上げられて、『さあ飛んでください』ですから。そんな簡単に飛べないでしょ(笑)。プレッシャーを背負わずに、まず自分のパフォーマンスを出してほしいですね」
真中 「自分のペースでやってほしい、ということ?」
石井 「そうすれば、おのずと結果が出る選手です」
真中 「投手陣は順調にいけば、非常にいいローテーションになると思う。6枚のイメージは湧いているのかな」
石井 「岸、涌井、則本昂、田中将の4枚は確定。3連戦を右、左、右でいくと、6連戦は左が2枚必要じゃないですか。無理に左でいくより、ちゃんと6回を3点以内に抑えられる投手は誰なのか、という見方の方がいいと思います」
真中 「なるほど…」
石井 「ただ、若い子は育てたいですよ。たとえば、ドラフト1位の早川(早大)。結果をある程度出してくれないと、ローテーションに入れないと思いますけど」
真中 「投打のキーマンというか、期待する選手はいるの?」
石井 「真中さんも監督時代によく聞かれたと思いますが、いないんですよね。みんなに頑張ってほしい。真剣に考えれば考えるほど、名前は挙げられませんね」
真中 「うん。全員だよね」
石井 「無難に答えるとすれば、松井ですかね。(試合の)最後を任せる投手として、何回しっかりフィニッシュしてくれるのか、昨年の先発の経験をどうやって出してくれるのか」
真中 「パ・リーグはソフトバンクが安定して強い。ローテーションを組み替えるなど、ソフトバンクを意識した戦いをするのかな」
石井 「めちゃくちゃ強いし、勝つすべを知っているチームですね。でも、普通にやらざるをえないというか…。ソフトバンクは強いけど、他のチームも強いんですよ」
真中 「パ・リーグはそうだよね」
石井 「その中で1位で終えるのは大変なことなので、ソフトバンクだけを意識するより、自分たちの野球をやることでしょうね」
◆順位予想は?
真中氏は最後に「開幕前に順位予想をやらないといけない。楽天の優勝でいいかな?」と大胆な質問をぶつけた。石井監督は「どこ(何位)でもいいですよ。僕は最下位にされても何とも思いません」。さらに「(優勝は)ソフトバンクで堅いんじゃないですか。そうしておけば評論家の威厳は保てると思いますよ」とアドバイス? を送った。飄々とした受け答えに「オープン戦を見て評価します」と真中氏。開幕直前に掲載する順位予想をお楽しみに-。
◆対談を終えて
ヤクルト入団は私が1993年で、石井監督は1年早い92年。年齢は彼の方が3歳下なのに、マイペースで風格すら感じる投手だった。私の経験では、監督になると、評論家など周囲の意見に惑わされることがある。カズ(一久)らしく自分のペースで、自分の野球を貫いてほしい。優勝を狙える戦力がそろっているし、コーチ、選手とコミュニケーションが取れる監督なので、期待している。(本紙専属評論家)