うろこ雲の下で、ストップウオッチを持つ伊藤トレーニングコーチの手が震えた。北條が激変していた。金本監督は計測タイムを刻んだノートを見る。北條ははにかんだような表情ながら、高い目標を語った。
「もっと足が速くなりたいので。いろいろ教えてもらったことを頭に入れて、しっかり練習したいです」
塁間の27・431メートルに近い30メートルダッシュで4秒09をマーク。上本(3秒87)、俊介(4秒03)、大和(4秒04)のトップ3には及ばないが、驚くのはその成長力である。昨秋のキャンプで4秒32だったものが今春のキャンプで4秒15になり、この日、さらなる上積みを証明。そりゃ、首脳陣も驚くはずだ。
今季のチーム盗塁数「59」はセ・リーグワースト。北條はわずか「6」だった。自己最多の122試合に出場したことを考えると実に残念な数字で、金本監督からも「足が遅い」と鈍足のレッテルを貼られてきた。今季は9月から1番に定着し、来季も斬り込み隊長を任される可能性が高い。広島のような機動力野球を実現させるには、北條の変わり身にかかっている。