プロが、小学生にベタぼれだ。12月28日にプロ野球宮崎県人会による野球教室が同県内で行われた。150人以上の生徒が集まり、ソフトバンク・武田翔太投手(23)が1人の少年に目を奪われた。
「衝撃でした。こんな子がいるんだって」
目を付けたのは小学4年生の左投げの投手。軸足一本で真っすぐに立ち、思い切りよく腕を振っていた。さすがにまだ非力な感は否めないが、バランスのいい投球フォームは確かに美しい。
「自然体であれだけできるなんて。10年先を考えたら恐ろしい」
最後に数人の小学生とプロの勝負が用意されたが、その少年も登場。「僕が選びました」と、キャッチボールを見た武田の推薦。「あの子のコーチになりたいなあ。絶対にプロになれる」。そう目を輝かせ、空いた時間に隣に座って積極的に話しかけた。普段のプレーや指導の感想を尋ねた。野球教室でプロが特定の少年をほめることはあっても、ここまで本気なのは珍しい。
オフは全国各地で野球教室が開催され、ほとんどのプロ野球選手が前向きに参加している。触れ合いを楽しみ、子供の将来を考え、ほぼ全員が「やってよかった」と語る。その半面、一度に大勢の生徒を指導をすることの難しさも、しばしば口にする。
練習方法を伝授することもあれば、手本を見せることも多い。各選手が工夫を凝らすが、武田のケースも一つの方法だ。もちろん、指導中は他の子たちと平等。時間を見つけて、その子にロックオンした。
左投げの少年には、忘れられない一日になったはずだ。彼はきっと、これからテレビや雑誌を通して武田の投球に夢中になるだろう。そこからヒントを得て、成長していく姿が目に浮かぶ。
「あの子のコーチになりたい」という右腕の願いが現実になる日が来るかもしれない。10年後、15年後、武田の口から「あの時の…」という言葉を聞きたい。(安藤理)